暗号資産(仮想通貨)取引所大手Coinbase(コインベース)は10日、自己管理型ウォレットアプリ「Base App(ベースアプリ)」の名称を、元の「Coinbase Wallet(コインベースウォレット)」へ戻すと公式Xで発表した。「速度を追求して設計した。許可を求めることなく、どこでも何でも取引できる」としている。2025年7月にベースアプリへ改称してから約14カ月での回帰となる。
SNS路線から「何でも取引できる場所」へ
今回の改称は、単に名前を戻すだけの話ではない。同ウォレットのプロダクト責任者ライアン・カス氏はDecryptの取材に対し、この改称はアプリがBase(ベース)の枠を超えてマルチチェーンの取引プラットフォームへ拡張したことを反映したものだと説明した。
「コインベースウォレットへの改称は、どのチェーン上にあるか、どのブランドの資産かにかかわらず、あらゆる資産にアクセスできることを表している」とカス氏は述べている。
実際、同ウォレットはハイパーリキッド上の無期限先物取引に対応し、ソラナなど他チェーンのサポートや、複数チェーンにまたがるトークン化株式の取り扱いも進めてきた。
「人々が何を取引するかに制限を設けたくない。利用者はあらゆる種類の資産を取引したいと求めている」ともカス氏は語った。
コインベースは2025年7月、ロサンゼルスでベースアプリを発表した。当時は暗号資産取引に加えてSNS、メッセージング、AIツール、クリエイター収益化を統合した「エブリシングアプリ」として打ち出していた。今回の改称は、その路線からの方向転換を意味する。
「テストキッチン」としての役割
カス氏は、コインベースウォレットを同社の「テストキッチン」と位置づける。本体の取引所では扱っていない資産や体験を先行して導入する場という意味だ。
「コインベースウォレットでは、たいてい物事をすぐに見つけられる」とカス氏。「我々はロビンフッド・チェーンを提供し、ハイパーリキッドの無期限先物も提供している。コインベースウォレットに登場したものの多くは、その後コインベースのリテール部門にも入ってくる」と説明した。
興味深いのは、競合であるロビンフッドのチェーンを扱っている点である。カス氏は、両社が顧客を奪い合う関係にありながら、互いのエコシステムを排除する余裕はないとの見方を示す。幅広い資産を提供し、どこで取引するかを利用者に委ねることが、顧客獲得の鍵だという。
「今はロビンフッド・チェーンが非常に熱い。だがベース・チェーンは非常に高速で、手数料も格安だ」とカス氏は語った。こうした流行は循環的なものであり、ベース・チェーンに回帰したときには準備ができているとの立場だ。
もっとも足元の勢いは鮮明だ。ロビンフッド・チェーンは稼働70日で総収益4,258万ドルを記録し、過去24時間収益で全ブロックチェーンの首位に立っている。
ソーシャル戦略の見直しが背景に
マルチチェーン取引への転換の背景には、ベースアプリのソーシャル戦略に対する同社の再評価がある。
7月には、ベースの創設者ジェシー・ポラック氏がアプリの統括から退き、ベースブロックチェーンそのものに注力する立場へ移った。同氏は、SNS機能やクリエイターコインへの注力が期待した普及につながらなかったと認めていた。
ただし、ソーシャル機能が完全に消えるわけではない。特定のモデルを優先するのではなく、利用者の需要に従う形で残る可能性があるという。
名称変更後もコインベースはベースへの関与を続ける方針で、ウォレットは引き続きベースの資産やコミュニティ、機能を提供していくとしている。


