米商務省は8日、半導体と量子技術の国内開発を支援するCHIPS・科学法に基づき、量子コンピューティング企業4社と研究開発の最終支援契約を締結したと発表した。対象はディーウェーブ、サイクオンタム、リゲッティ、クオンティニュアムの4社で、各社に最大1億ドル(約154億円)、合計で最大4億ドル(約614億円)を拠出する。
量子技術の開発が国家的に加速する一方、その進展は暗号資産が依拠する暗号を将来脅かしうるものでもある。ビットコイン(
BTC)とイーサリアムの双方で、耐量子化への動きが進んでいる。
米政府、量子4社に最大4億ドル
今回の支援は、半導体と量子技術の国内開発を後押しするCHIPS・科学法の枠組みで実施される。
内訳を見ると、4社はそれぞれ異なる方式の量子コンピューティングに取り組んでいる。ディーウェーブはアニーリング型とゲートモデル型の超伝導方式、リゲッティも次世代の超伝導方式を手がける。
サイクオンタムは光を用いるフォトニック方式、クオンティニュアムはイオントラップ方式のフォールトトレラント(誤り耐性)量子コンピュータを開発している。
いずれの契約も「最大1億ドル」という上限額での支援であり、量子ビット数やエラー率の改善、半導体製造技術の高度化といった研究開発に充てられる。
なぜ暗号資産に量子リスクがあるのか
量子コンピュータの進展が暗号資産にとって脅威となるのは、その暗号技術の根幹に関わるためだ。
ビットコインもイーサリアムも、取引の署名に楕円曲線暗号(ECC)を用いている。十分に強力な量子コンピュータが実用化されれば、ショアのアルゴリズムによって公開鍵から秘密鍵を導き出せてしまう恐れがある。オンチェーンに公開鍵が露出している資産は、理論上、盗み出される可能性がある。
この脅威はまだ現実のものではないが、各国の当局や研究者は準備を急いでいる。米国立標準技術研究所(NIST)は、2035年以降に連邦政府でのECC使用を認めない方針を示しており、こうした流れが暗号資産の開発者にも危機感を促している。
ビットコインの2つの提案、イーサリアムの2029年目標
ビットコインでは、耐量子化に向けた2つの提案が議論されている。いずれもドラフト段階だ。
1つは「BIP 360(Pay-to-Merkle-Root)」で、タップルートから量子に弱い鍵での支出方法を取り除いた新しいアウトプットタイプを提案する。公開鍵が長期間さらされることで生じる「長期露出攻撃」への耐性を持たせ、将来のポスト量子署名導入の土台にする狙いがある。
もう1つの「BIP 361」は、量子に弱いアドレスへの送金を段階的に禁止し、従来のECDSA/Schnorr署名の使用を制限していく移行計画だ。同提案によれば、2026年3月1日時点で全ビットコインの34%超が、すでにオンチェーンで公開鍵を露出しているという。
イーサリアムはより踏み込んだ目標を掲げている。イーサリアム財団は、2029年12月までにイーサリアムL1を実行層・合意形成層・データ層の3層すべてで量子耐性化することを最優先目標としている。共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、量子耐性署名を安価に扱うための提案を相次いで示している。
関連:イーサリアムの量子耐性を低コスト化──ヴィタリック氏が新提案EIP-8288
関連銘柄:
BTC
ETH
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.6円)


