米司法省は1日、テロ組織ハマスへの送金を目的とした暗号資産(仮想通貨)56万ドル(約8,900万円)超を押収し、資金集めと支援者の勧誘に使われていたドメインとサーバーを差し押さえたと発表した。インフラと暗号資産アドレスは、軍事部門のカッサム旅団のために管理されていたという。
メールで使い捨てのアドレスを配布
司法省が公開した裁判所文書によると、ハマスとのつながりを主張するグループは暗号化された通信アプリのグループチャットで支援者に呼びかけ、資金集め用のウェブサイトへ誘導していた。寄付先の暗号資産アドレスは固定せず、次々に入れ替えて伝えていたという。
FBI(米連邦捜査局)の秘密情報源が2025年2月10日にメールで問い合わせると、数時間後にアラビア語の返信が届いた。
指定されたのは、トロンのTRC20規格で流通するUSDT(テザー)だった。返信は、ウォレットアドレスは安全確保のために定期的に変更しており1回の送金にしか使えないとしたうえで、次に送金する際はあらためてメールで連絡するよう求めている。
バイナンスの扱いについての指示もあった。組織名が分かるデータを入力するとウォレットが凍結される恐れがあるとして、送金にはTrust Wallet、RedotPay、OKX、Kast、Bybitを挙げ、Binanceは通貨の購入までにとどめるよう促している。
送金を代行させる相手には受取人の正体を明かさないようにとも書いていた。宣誓供述書のなかでFBI捜査官は、バイナンスが本人確認(KYC)を義務づけていることが回避の理由だとの見方を示している。
インフラ掌握で寄付を傍受、数千人を特定
暗号資産の押収は3回に分けて実施された。司法省が公開した3通の宣誓供述書は2025年3月25日、6月25日、10月10日付で、捜査当局は複数の情報源から得た情報をもとにアドレスを特定し、追跡したうえで押収に至っている。
これらの押収と合わせて、FBIアルバカーキ支局はカッサム旅団の主要サイト「alqassam.ps」を支えるドメインとサーバーも押さえた。掌握によってハマス宛ての寄付を傍受できるようになったほか、寄付を送ろうとしてオンラインで接触した数千人分の情報も手にしている。
インフラの押収は2026年に入っても続く。今回公開された8月18日付の令状は、ブラジル・サンパウロに置かれ英DataCamp Limitedが保有するサーバー1台を対象としたものだ。同サイトは2024年1月24日から少なくとも2026年4月13日まで、イランのプロバイダーが登録業者となっていた。
押さえたのは資金より経路
今回の押収額は56万ドルだが、8月18日付の宣誓供述書によれば、この資金集めのネットワークは2024年10月ごろから稼働し、2025年11月までに300万ドル(約4億7,700万円)を超える寄付を受け取っていた。押収できたのは受領総額の一部にとどまる。
ドメインとサーバーを掌握したことで、その後の寄付は捜査当局に流れ込む構図になった。FBIは入手した数千人分の情報を今後のテロ対策に活用するとしている。
FBIアルバカーキ支局のジャスティン・ガリス特別捜査官責任者は、寄付を受け取る能力を削ぐことと、寄付者に届く連絡への不信を生むことが今回の作戦の主眼だったと説明した。
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