米上院共和党は10日、暗号資産(仮想通貨)の市場構造を定めるクラリティ法案(デジタル資産市場明確化法案、H.R.3633)の修正案を公開した。上院銀行委員会デジタル資産小委員会の委員長を務めるシンシア・ルミス議員が自身のサイトで示したもので、全630ページ。下院を通過した法案の条文を全面的に差し替える「全面代替修正案」にあたる。上院が15日に予定するクローチャー投票を前に、審議の土台となる条文が出そろった形だ。
「名ばかりの分散型」にCFTC登録を義務付け
今回の修正案で暗号資産業界にとって最も影響が大きいのは、分散型金融(DeFi)の扱いだ。人や集団に支配されている取引プロトコルについては、商品先物取引委員会(CFTC)への登録を義務付ける。
ルミス氏はXで、名ばかりの分散型(decentralized-in-name-only)DeFiプロトコルがどういう場合にCFTCへ登録しなければならないかを明確にしたと説明した。
あわせて、DeFiに関する規定の適用範囲を現物取引と現金取引に限定した。ルミス氏によれば、これは予測市場をめぐるネイティブアメリカン側の懸念に応えたものだという。
条文上は、Division AのTitle IIIに「分散型金融における責任あるイノベーション」という章が置かれた。その冒頭で、非分散型の取引プロトコルへ既存の証券仲介業者要件と銀行秘密法の要件を適用するための規則制定を規定している。
CFTCの登録制度を定めるDivision Bにも、ソフトウェア開発者の保護と非分散型取引プロトコルを扱う条項が設けられた。
分散の度合いを測る基準は、トークンの側にも置かれた。修正案はDivision Aに「協調的支配(coordinated control)」という概念を設け、SECが規則で定義するとしたうえで、5つの判断指標を挙げている。
こちらはCFTCへの登録義務ではなく、トークン発行者の開示義務と、関係者による転売制限の適用範囲を左右する基準だ。
プロトコルが公開され誰でも利用できる状態か、特定の者が利用を一方的に制限・検閲できる権限を持たないか、単独または共同支配下の集団が発行済みトークンやガバナンス投票権の49%超を保有していないか。さらにシステムが自律状態に達しているか、価値還元の仕組みが機能しているか、である。
協調的支配が解消されたと認められれば、関係者の転売にかかる制限が緩和される。
一方で、透明でルールベースの合意形成システムである「分散型ガバナンスシステム」は、それ自体を「人」や「共同支配下の集団」とはみなさないと明記された。DAOのような法人格を持つ組織も、中央集権的な経営によらない限りこの定義に含まれる。
民主党の要求115件超を反映も、倫理規定は平行線
ルミス氏は、この修正案が8月を通じた超党派の作業を反映したものだと強調する。民主党は法案の起草に関与し、条文に115件を超える成果を確保したとの立場だ。
具体例として挙げたのが、詐欺実行者に対する重罪による参入禁止、CFTCへの1億5,000万ドル(約231億円)の予算措置、暗号資産取引所最大手バイナンスのようなプラットフォームへの取り締まりである。
「彼らが要求したものはほぼすべて手に入った。自分たちが作り上げた法案に賛成票を投じるべきだ」とルミス氏はXで述べ、民主党に賛成を促した。
もっとも、最大の争点は動いていない。倫理規定は7月に公開された案からほぼ変わらず、公職者や職員、その配偶者によるデジタル資産の発行・後援を禁じる内容にとどまる。
民主党はドナルド・トランプ大統領の暗号資産事業を対象とする、より広範な制限を求めてきた。それは今回も盛り込まれていない。
一部報道によれば、この新たな条文案を支持する民主党議員は現時点でいないという。
15日の投票が分水嶺に
15日の投票は法案の最終可決ではなく、審議に進むための議事進行動議へのクローチャー、つまり討論打ち切りの採決だ。可決には60票が必要で、共和党は53議席のため、全員が賛成しても最低7人の民主党・無所属議員の賛成を要する。
政権側も動いている。スコット・ベッセント財務長官はかねて法案の前進を求めており、9日にも上院に対し交渉のテーブルに留まり議事進行動議に賛成するよう促した。これを怠れば米国がデジタル資産の主導権を放棄する意思があると受け取られかねないとも警告している。
市場の見方は厳しいままだ。予測市場では年内成立の確率が低水準で推移しており、法案が不成立に終わった場合に備えてCFTCが独自に規制枠組みを整える構想も浮上していた。
なお、今回公開された文書は正式に提出された修正案ではない。提案者欄と議案番号は空欄のままで、提出を予定する条文案という段階にある。クラリティ法案は2025年7月に下院を294対134で通過し、2026年5月に上院銀行委員会が15対9で可決したが、本会議での採決には至っていない。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.1円)


