ステーブルコイン発行企業のテザー、ブロックチェーンのトロン、分析企業のTRM Labsが共同運営する「T3金融犯罪対策ユニット(T3 FCU)」は14日、世界で4億5,000万ドル(約712億円)超の違法資金を凍結したと発表した。
2025年は押収した違法資金が4割増、世界23地域で捜査当局と連携
T3 FCUは2024年に発足した組織で、暗号資産(仮想通貨)を悪用した資金洗浄や詐欺、ハッキングなどへの対応を目的としている。米国や欧州を中心とした法執行機関と密接に連携しており、高度な取引データの分析を通じて、犯罪資金の特定や迅速な資産凍結といった実務的な捜査支援を行う。
報告によると、2025年は取引所ハッキングや禁止薬物取引、北朝鮮関連の活動、テロ資金供与などの調査を支援した。また、自宅侵入や誘拐に加え、物理的な脅迫で暗号資産を奪う「レンチ攻撃」に関連した資金追跡にも深く関与したと説明している。
24時間以内の迅速な凍結と国際捜査への貢献
T3 FCUによると、2025年に押収した違法資金は前年を43.9%上回った。米国、スペイン、ドイツ、オランダ、ブルガリアなどの法執行機関が捜査を主導し、暗号資産を利用した国際的な不正資金の流れに対する監視を強めている。
同組織は、レイヤー1ブロックチェーン「トロン」上で流通するUSDTの不正利用対策を急ピッチで進めている。法執行機関からの要請に基づき、アカウント乗っ取りや緊急の暴力事件が発生した際、24時間以内に資産を凍結した事例も複数存在すると公表した。
ブラジル連邦警察が主導した大規模捜査「オペレーション・ルソコイン」では、現地当局や金融機関と連携し、30億レアル(約930億円)超の暗号資産凍結を支援した。この中には、犯罪組織に関連するとされる430万USDT(約6.8億円)も含まれており、国境を越えた官民協力の重要性を裏付けている。
現在、T3 FCUは5大陸で数百万件規模の取引を分析し、米国、ブラジル、英国などを含む23の司法管轄区域の当局と連携している。これにより、事後的な対応ではなく、犯罪が発生した瞬間に資金移動を阻止するリアルタイムの介入体制が構築されつつある。
FATF報告書でも言及
国際的なマネロン対策機関であるFATF(金融活動作業部会)は今年、公民連携モデルに関する報告書でT3 FCUに言及した。報告書では、同組織を「世界中の法執行機関にとって極めて有用なリソース」と紹介した。
テザーのパオロ・アルドイノCEOは、デジタル資産の利用が広がる中で、安全性を確保する責任も増していると述べた。また、コンプライアンスは選択肢ではなく、利用者保護と不正行為の阻止に向けた取り組みの一部だとしている。
暗号資産市場では、資金移動の即時性が高い一方、不正利用への対応速度も求められている。民間主導の監視体制が各国当局と連携を深める流れは、今後さらに広がる可能性がある。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.3円、1レアル=31円)



