国土交通省、金融庁、警察庁、財務省の4省庁は28日、暗号資産(仮想通貨)を用いた不動産取引のマネーロンダリング対策について、不動産業界6団体および日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)に対し連名で要請文を発出した。暗号資産が国境を越えて瞬時に移転できる性質から、不動産取引の決済手段として悪用されるリスクが高いとの認識を示している。
4省庁が連名で要請──異例の重さが示す危機感
今回の要請は、国交省(不動産業所管)、金融庁(暗号資産交換業所管)、警察庁(犯罪捜査)、財務省(外為法所管)の4省庁が連名で発出しており、省庁横断的な対応としては異例の重さだ。不動産業界側に加えてJVCEAにも宛てられており、暗号資産交換業者に対しても直接的な対応を求めている。
要請の背景には、資産保全や投資目的での不動産購入が増加する中、国内外の犯罪組織が犯罪収益の形態を変換する目的で不動産取引を悪用するリスクがあるとの認識がある。暗号資産はその移転が瞬時に国境を越えて行われるため、従来の現金取引以上にマネーロンダリングに利用される危険性が高いと要請文は指摘した。
要請の3つの柱──不動産業者・暗号資産交換業者それぞれに対応を求める
要請文が求めている対応は大きく3つに分けられる。
第一に、不動産業者が売却代金として暗号資産を受け取り法定通貨に換金する行為について、暗号資産交換業に該当する可能性があることへの留意だ。暗号資産の交換や媒介を暗号資産交換業者としての登録なしに行った場合、資金決済法に違反するおそれがある。また、無登録で暗号資産交換業を行っている疑いを発見した場合は警察への情報提供が求められている。
第二に、不動産業者が暗号資産を用いた取引を行う場合、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認を厳格に実施し、疑わしい取引は所管行政庁へ届け出ること、事件性が疑われる場合は警察へ通報することが要請されている。
第三に、暗号資産交換業者に対しても、顧客が不動産売買代金を暗号資産で受け取る場合や、顧客の属性に見合わない高額取引を行おうとしている場合など、不審な点が認められる際には取引時確認を厳格に行い、疑わしい取引の届出や警察への通報を適切に行うよう求めている。
暗号資産で不動産を購入する場合に知っておくべきこと
今回の要請は不動産業者と暗号資産交換業者に向けたものだが、暗号資産で不動産の購入を検討している個人にも影響がある。以下の点は把握しておく必要がある。
まず、不動産業者に暗号資産を直接渡して物件を購入するケースでは、不動産業者側が暗号資産を受け取って換金する行為が暗号資産交換業に該当する可能性がある。不動産業者が暗号資産交換業の登録を受けていない場合、その取引自体が資金決済法違反に問われるリスクがあるため、買い手側も取引の適法性を確認する必要がある。
次に、暗号資産を売却して円に換えた上で不動産を購入する場合、現行の税制では暗号資産の売却益は雑所得として最大55%の所得税が課される。購入時点での暗号資産の取得価額と売却価額の差額が利益として計上されるため、多額の暗号資産を一度に売却して不動産に充てる場合は税負担が大きくなる可能性がある。なお、政府は暗号資産を金商法の対象に加える改正案を閣議決定しており、将来的に分離課税(約20%)へ移行する可能性がある。
さらに、外為法上の報告義務も見落としがちなポイントだ。海外から3,000万円相当額を超える暗号資産を受領した場合は「支払又は支払の受領に関する報告書」を提出する義務がある。加えて、2026年4月1日以降は、非居住者が日本国内の不動産を取得した場合、取得の目的を問わず報告対象となった。海外居住者が暗号資産で国内不動産を購入する場合、二重の報告義務が発生する可能性がある。
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