注目の企業・メドピア
ChatGPTの登場により、医療の世界における「集合知」の形成は、今後爆発的に加速することが期待されている。DAO(分散型自律組織)とブロックチェーンは、医療倫理の面から集合知形成をサポートしそうだ。
メドピア株式会社(社長:石見陽氏)は3日付で、住友ファーマでデジタルマーケティングを推進してきた横田京一氏を同社の「MXカタリスト」に選任した。メドピアは、全国の医師が自らの経験や知識を「集合知」として共有し合う、医師専用の医療情報サイトを運営するIT企業である。
ChatGPTと集合知
集合知とは、多くの人やグループが持つ知識や意見、経験などを統合・共有し、それを利用して新たな知識や意思決定を生み出すことをいう。分かりやすく言えば、「みんなで知恵を出し合い、より良い結果やアイデアを生み出すこと」である。
この集合知であるが、医学と滅法相性がよい。
たとえば、「世界の第一線のガン研究者たちが、手の内を明かして議論をすれば、ごく短時間でガン治療に関する最終的な結論が得られるはず」といわれる(中原紘・住友別子病院整形外科部長談)。
ChatGPTの役どころは、ガン研究者たちが集まる情報サイトの司会役だ。はたして、ガン研究者たちの活発な議論と、ChatGPTの巧みなファシリテーションにより、ガンの完璧な治療法が見つかったとしよう‥‥
ニワトリと卵
ここで大きな問題が生じる。
「ガンの完璧な治療法を見つけたのは誰の手柄か?」ということだ。ガン研究者たち? ChatGPTの開発者? それとも情報サイトの運営者?
この問題は「卵をたくさん産ます方法を考えついた男がいたとしたら、卵は誰のものか。たくさん産むことのできるニワトリのものか? その男のものか?」とまったく同じ構造を有する。
DAOとブロックチェーン
さあ、ここでDAOの出番である。
DAO(分散型自律組織:Decentralized Autonomous Organization)は、デジタル資産やサービスの取引を管理するための組織構造であり、中央集権的な管理者が存在せず、ブロックチェーン技術を利用して分散的に運営される組織である。その特徴は、①透明性②柔軟性③民主性である。
件の医療情報サイトにDAOを導入すれば、スマートコントラクトのはたらきにより「ガン研究者」「ChatGPT開発者」「情報サイト運営者」の三者に、貢献に応じて正当な報酬を分配することができる。
その過程はガラス張りで、改ざんは不可能だ。
「金の卵」はブロックチェーンの恩恵で、誰かに独り占めされることなく、自主的かつ民主的に分配されるだろう。
ChatGPTと集合知とDAOの三者が、これほどダイナミックなシナジーを発揮する分野は、医学をおいて他にない、と改めて強調しておこう。