米資産運用会社ビットワイズの最高投資責任者(CIO)マット・ホーガン氏は9月30日(米国時間)、週次メモを公表し、暗号資産(仮想通貨)の市場構造法案「クラリティ法案」が米上院で頓挫したにもかかわらず相場が上昇した理由を分析した。同氏は、法案の不成立によって業界に有利な規制当局の対応がかえって早まったとの見方を示している。
採決後、NEARは2倍超に上昇
クラリティ法案は約2週間前、3年に及ぶ交渉を経たものの、上院で審議を進めるのに必要な60票を得られなかった。業界が成立を求めてきた法案だったが、相場はその後むしろ上昇している。
ホーガン氏によると、採決以降の上昇率はビットコイン(
BTC)が8%、イーサリアム(
ETH)が7%だった。NEAR(
NEAR)は104%、ユニスワップ(
UNI)は49%、アバランチ(
AVAX)は43%と、大幅に値上がりした銘柄も多い。
ステーブルコインや取引所など4分野に恩恵
同氏は、法案の頓挫で恩恵を受けた分野として4つを挙げた。1つ目はステーブルコインだ。法案の最終案は、取引プラットフォームが利用者にステーブルコインの利息や利回りを「いかなる形でも」支払うことを禁じ、違反1件あたり最大500万ドル(約7億9,000万円)の罰則を設けていた。
廃案により、2025年に成立したジーニアス法が引き続き適用される。同法は発行体による利息の支払いを禁じる一方、取引所については定めていない。このため取引所は、ステーブルコインの残高に応じた「報酬」を連邦レベルの上限なく支払える。同氏は最大の勝者をコインベースとした。
2つ目は取引所だ。法案は現物取引所の全米共通ライセンスを設け、伝統的な金融大手の参入を容易にする内容だった。取引所とブローカーの兼業を制限する規定も含まれていたが、いずれも見送られ、コインベースやクラーケンなど既存の取引所が優位を保つという。
3つ目はトークン化だ。米証券取引委員会(SEC)は法案頓挫の2日後、許可制の自動マーケットメーカー(AMM)や流動性プールを通じて、トークン化された米国株の取引を認める命令を出した。期間は5年で、対象は上場米国株に限られ、取引量の上限もある。同氏は、ブラックロックのトークン化ファンド「BUIDL」の名義書換代理人を務めるセキュリタイズを最大の勝者に挙げた。
4つ目は、プロトコルの収益で自らのトークンを買い戻す「収益型トークン」だ。採決以降、ハイパーリキッド(
HYPE)は15%、パンプファン(
PUMP)は19%、ライター(
LIT)は10%上昇した。SECは25日に公表したよくある質問(FAQ)で、システムが機能している場合、買い戻しプログラムの発表は証券性の判断で問われる「経営努力の約束」に当たらないとの見解を示している。
残るリスクは2029年の政権交代
一方で同氏は、規制当局の判断は法律ではない点をリスクに挙げた。2029年1月に新政権が発足すれば、SECや米商品先物取引委員会(CFTC)の体制が変わり、暗号資産への姿勢が厳しくなる可能性がある。
ただし同氏は、それまでに世界の大手金融機関がブロックチェーン上での事業構築を進め、暗号資産は「潰すには大きすぎる」存在になっているとみて、過度には懸念していないという。
法律による長期の確実性と引き換えに、規制当局の判断でより有利なルールを早く得た――というのがホーガン氏の整理だ。相場の上昇はその構図を市場が好感した結果とみられるが、規制当局の判断が政権交代後も維持されるかが今後の焦点となりそうだ。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.93円)
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