イーサリアムの研究開発を支える非営利団体イーサリアム財団は2日、オープン・アノニミティ・プロジェクトと共同開発したzkAPIを公式ブログで発表した。オープン・アノニミティは、AIの利用内容を本人とひも付けずに推論を使えるようにする技術に取り組むプロジェクトで、ブラウザ版のAIチャットOA Chatを提供している。zkAPIは、AIなどの従量課金APIを支払い元の身元とひも付けずに利用できる仕組みで、イーサリアムのメインネットですでに稼働している。
zkAPIはイーサリアムのボールトとゼロ知識証明で支払いと身元を分離
ブログによると、現在のAI APIでは、APIキーがアカウントに、アカウントが支払い手段にひも付いている。送ったプロンプトはすべてその記録に積み重なり、AI提供者は長年の利用を一つのプロファイルに結び付けられるという。
zkAPIでは、利用者がイーサリアム上のボールト(金庫)コントラクトに、通常のトランザクション1回でETHなどを入金する。残高は本人だけが使える非公開の記録となり、入金元まではたどれない。
- アプリは、利用者の端末上で動く小さなクライアントと通信する
- クライアントは、残高が足りていて二重使用でもないことを示すゼロ知識証明をzkAPIサーバーに送る。プロンプトや身元は含まない
- サーバーは証明を確認し、ドル建ての利用上限が付いた短命なAPIキーをその場で発行する
- プロンプトは端末からAI提供者へ直接送られる。キーの失効後、実際に使った分だけが残高から差し引かれる
支払いを扱うサーバーは内容を見ず、内容を見るAI提供者は支払い元を知らない構造だ。当事者ごとに知り得る範囲を表にまとめた。
| 当事者 | 知り得る情報 | 知り得ない情報 |
|---|---|---|
| zkAPIサーバー | 有効な支払いがあること、セッションごとの金額 | 利用者が誰か、何を尋ねたか、どの入金から払ったか |
| AI提供者 | プロンプトと回答 | 誰が支払っているか |
| イーサリアム(公開情報) | 入金、残高のクローズ、引き出し | 残高が何に使われたか |
資金は企業の口座ではなくボールトに置かれる。zkAPIのサーバーがすべて停止しても、利用者はオンチェーンで残高を引き出せる。
クライアントはOpenAIやOllama(オラマ)互換のAPIを手元で提供するため、既存のアプリやエディタは接続先を自分の端末に向けるだけで使える。ブログはAI以外にも、ブロックチェーンのRPC、画像・動画生成、VPN、機械同士のサービスなど、従量課金のサービス全般に使えるとしている。
zkAPIの限界──IPアドレスとプロンプトの内容は隠せない
一方でブログは、zkAPIが隠すのは支払いのひも付けであり、AI提供者はリクエストの内容に加え、IPアドレスなどのネットワーク情報も把握できると明記している。
同じIPアドレスからリクエストを送り続ければ、ゲートウェイが利用パターンを結び付けられる可能性がある。ブログは、より強いプライバシーを求める利用者の選択肢として、Tor(トーア)を経由し、セッションごとに新しい経路を使う方法を挙げた。
プロンプトの内容も手がかりになる。同じ個人情報や文体、会話履歴、資料を使い回すと、AI提供者がセッション同士を結び付けられる可能性があるという。単発の質問ほど秘匿性は高いが、過去の文脈がない分だけ有用性は下がるとして、プライバシーと利便性のトレードオフだと説明している。
GitHubのREADMEでは、プロトコルは実験段階と記されている。
ヴィタリック氏らのzkAPI設計を実装、OA Chatで利用可能に
zkAPIは、ヴィタリック・ブテリン氏とダビデ・クラピス氏がイーサリアム・リサーチで公開した設計の実装だ。ブテリン氏は2月、イーサリアムとAIの統合戦略にZK決済によるAPI呼び出しを含めていた。
オープン・アノニミティ・プロジェクトのケン・リウ氏はXで、zkAPIを「OAのリンク不能な推論を一般化し、支払いも抽象化したようなもの」と説明した。OA Chatは一般公開され、zkAPIでの支払いにも対応した。
リウ氏は「プライバシーと主権が基盤にあり、人々が主導権を持つインフラがもっと存在すべきだ」と述べている。
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