逆神ジム・クレイマー氏、ビットコイン保有を推奨 気になる仮想通貨の行末

木本 隆義
22 Min Read

「逆神」の実態と投資家が学ぶべき視点

アメリカの著名な投資アナリスト=Jim Cramer(ジム・クレイマー)氏は28日、「Mad Money」番組内でビットコイン保有を推奨した。

ジム・クレイマー氏は、CNBCの番組「Mad Money」のホストとしてアメリカでは広く認知されており、歯に衣着せぬ解説と大胆な銘柄推奨で知られている。しかし、その予想がはずれることが少なくなく、投資家の間ではしばしば「逆神」と揶揄されている。以下では、過去の事例を時系列で振り返りながら、その要因と投資家への示唆を整理しよう。

  • 2000年代初頭:ドットコムバブル
    クレイマー氏はITバブル全盛期にテクノロジー株を強く推奨した。ところが、2000年以降にドットコムバブルが崩壊し、多くのテック銘柄が暴落した。テレビやメディアでの影響力が大きかったため、彼の推奨に追随した投資家も多く、大きな損失を被ったケースが散見された。
  • 2008年:リーマン・ブラザーズ破綻
    リーマン・ブラザーズ株を買い推奨していたが、同社は破綻し、世界的な金融危機の引き金となった。この出来事はクレイマー氏の「逆神」イメージを決定づける大きな要因となった。
  • 2015年:エネルギー株推奨
    クレイマー氏は「エネルギー株は回復する」と予測したが、実際には原油価格がさらに下落し、エネルギーセクターは長期低迷を余儀なくされた。これも彼の予測がはずれた代表的な事例である。
  • 2020年:パンデミック初期
    パンデミック初期にクレイマー氏が「有望」と示唆した銘柄の一部は、コロナ禍の長期化により大幅に業績を悪化させた。投資家の期待を裏切る形となり、再度「逆神」の評判を強めることとなった。
  • 2021年:ゲームストップ(GME)騒動
    クレイマー氏はゲームストップ株を「売り時」とみなしていたが、SNSを通じた個人投資家の買い支えによって株価は急騰した。彼の見通しがはずれたことが投資家の話題となり、逆神イメージをさらに加速させた。
  • 2022年:インフレと金利予想
    「インフレは一時的」「金利は上昇しない」との見方を示していたが、実際にはインフレが長引き、中央銀行は複数回の利上げに踏み切った。これにより、クレイマー氏の予測と現実の乖離が批判の的となった。
  • 2023年:テクノロジー株の過大評価警告
    クレイマー氏が「過大評価」と断じたテクノロジー株が、その後も値上がりを続けた事例が見られた。市場では彼の「逆神」らしさがまたしても取り沙汰される格好となった。
  • 2023年3月:シリコンバレーバンク(SVB)推奨
    クレイマー氏が強気姿勢を示したSVBは、数週間後に破綻した。メディアやSNSでは「クレイマーが推奨した結果だ」などと揶揄され、一気に話題が広がった。
  • 2023年:Inverse Cramer Tracker ETFの登場
    クレイマー氏の推奨とは逆張りのポジションを取るETFが設立された。ネット上では「クレイマーと逆の戦略が正解になる」というミームが拡散し、彼の「逆神キャラ」をさらに印象づける一因となった。
  • 2024年以降:続く逆神伝説
    「これはいける」と推奨した銘柄が下落し、「これは危険」と警告した銘柄が上昇する事例が続出している。ファンからはネタ的に扱われる一方、投資家の間では「逆張りの材料」として利用される場面もある。

彼の予想はなぜ、こうまではずれるのだろうか? 主要な要因を分析してみよう。

  • 短期予想の困難さ
    市場はニュースや投資家心理に大きく左右されるため、短期予測そのものが難しい。テレビ番組で瞬発的なコメントを求められるクレイマー氏は、特に短期的な予想を多用し、そのはずれが目立つ形になっている。
  • メディア露出の多さ
    クレイマー氏ほどメディアで取り上げられるアナリストは多くない。人目に触れる機会が多いため、はずれた際に「またクレイマーがはずした」とSNSで拡散されやすい構造にある。
  • 感情的かつ過激な表現
    テレビ番組特有の演出もあり、クレイマー氏の言動はしばしば感情的で過激になりがちである。投資判断には冷静さが不可欠だが、視聴者の興味を引くための演出が本人の分析を狂わせる一因となっている可能性がある。
  • 過去の成功体験による固定観念
    クレイマー氏はヘッジファンド時代に年平均20%を超えるリターンを達成した実績を持つ。その成功体験ゆえに、市場環境の変化を過小評価し、自身の従来の手法を頑なに信じ続ける傾向があると考えられる。

以上から論理的に帰結される「投資家が学ぶべきポイント」はこうだ。

  • 有名人イコール正解ではない
    知名度の高いアナリストや解説者の意見であっても、鵜呑みにせず客観的視点を持つべきである。特に短期予想は変動要因が多く、あっという間に状況が変化する。
  • 自分の投資軸を確立する
    最終的な投資判断は自己責任で行う必要がある。ファンダメンタルズ、テクニカル分析、マクロ経済の状況など、多角的な情報を総合して自らの判断を固めることが重要。
  • 逆張り戦略の存在
    「Inverse Cramer Tracker ETF」のように、逆張りで利益を狙う発想が投資家に一定の支持を得ている。大衆心理や「逆神」の見立てを逆手に取る戦略は、リスクもあるが、一つの選択肢として考えられる。
  • 短期と長期を分けて考える
    クレイマー氏が提供する瞬時の解説は短期向けである場合が多い。中長期投資を志向するのであれば、短期的なノイズに振り回されず、企業の業績や経済のトレンドを踏まえた冷静な対応が欠かせない。

ジム・クレイマー氏は過去に輝かしい実績を残し、多くの投資家に影響を与えてきた。しかし、近年ではその推奨銘柄や市場予測がたびたびはずれ、「逆神」としてのイメージが強くなっている。これは短期予想の難しさ、メディアでの過度な露出、感情的なプレゼンテーション、そして成功体験による固定観念といった複数要因が重なった結果と考えられる。

投資においては、個人の判断基準を確立し、自らの責任でポジションを取ることが重要だ。クレイマー氏の「逆神」ぶりを逆手に取る投資手法もあるが、最終的には市場の現状と自分のリスク許容度に照らし合わせる必要がある。投資も人生も、結局は自己責任で決断し、適度にリスクをコントロールすることこそが長期的な安定をもたらすのだ。

関連:ビットコイン検索数が急上昇、2021年の「仮想通貨バブル」と同水準に
関連:ビットコイン、急落後買い戻しの動き【仮想通貨チャート分析】

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

Share This Article
Follow:
フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
Leave a Comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA