ブケレ大統領に再評価の機運
6日以降、各国メディアに、エルサルバドルの「国家的ビットコイン投資」をテーマにした記事が相次いで掲載されている。先月以来のビットコイン価格の急回復を受け、同国ブケレ大統領の投資手腕に再評価の機運が高まっている。
一連の検証記事は、堅調なビットコイン相場を受けたものだ。
しかし、どちらかといえば、ブケレ大統領に批判的な記事が多い。ビットコインは1年後に半減期を控え、このまま上昇基調に転じる可能性もある。ブケレ懐疑派としては、ここらでアンチ記事の在庫一掃をしたいのだろう。
国家的ビットコイン投資
エルサルバドルが、世界で初めて暗号資産のビットコインを法定通貨にしたのは、2021年の9月7日のことだ。
ところが、当時47,000USドル(以下、ドル)だったビットコインは、翌々月には下降トレンドに入ってしまい、2022年11月には底値の15,500ドルをつけた。
典型的な「ジャンピングキャッチ」(高値掴み)であり、ブケレ大統領はながらく四面楚歌の状態であったが、長期投資の視点から彼の投資内容をもう少し詳細に見てみよう。
エルサルバドルの国家会計
GDP(2022):300億ドル
歳入(2022):90億ドル
ビットコイン購入(累計):1.13億USドル
エルサルバドルのビットコイン購入は、GDP比で0.3%、歳入比でみても1%と、意外と少ない。これだけ見れば、むしろ健全・堅実といえる。
同国のビットコイン保有数は、2022年7月1日時点で2,381BTC(平均購入価格43,357ドル)。同国のビットコイン保有状況は資料によってかなり齟齬があるのだが、この数字はブケレ大統領自身のツイートによるもので、信憑性が高い。
本稿執筆時点(2023年4月9日:BTC価格28,000ドル)では、約2,630BTC(平均購入価格43,000ドル)と推定される。
なお、この数字は「(2022年11月17日以降)毎日1BTCずつ購入していく」というブケレ大統領の宣言とも整合している。

ドルコスト平均法
エルサルバドル大統領が長期投資について教えてくれる教訓は、やはり「ドルコスト平均法は強い」ということだ。
同国は、ビットコイン投資開始直後に「買いすぎた」ばかりに、その後底値は15,500ドルをつけたにも関わらず、平均購入価格はほとんど下がっていない。
投資開始直後に「まとめ買い」した方が利益が大きくなるケースは当然ありうるが、それは「結果論」にすぎないことを肝に銘じるべきだろう。
現に当のエルサルバドル大統領も、2022年11月17日以降は押し目買いではなく、「1日1BTC」のオーソドックスなドルコスト平均法に立ち戻っているではないか。
一見堅実だが‥?
歳入比で、わずか1%にすぎないエルサルバドルのビットコイン投資。
一見堅実だが、そうではない。
エルサルバドルは財政赤字なのだ(2022年は対GDP比で▲2.7%)。
2023年と2025年には、16億ドルの国債が償還期限を迎えるが、財政赤字のままだと、虎の子のビットコインを償還に充てざるを得なくなる。
資金繰りに困って、高値掴みした金融商品を、捨て値で泣く泣く手放すというのは、長期投資における最大の悲劇だ。
「投資は余剰資金で」
一寸先は闇
筆者自身は、ビットコインがある日突然無価値になることはないと考えるが、その可能性を考えておかないことは愚かだろう。
1989年時点でのワープロに対する見方は、将来予測の難しさを教えてくれる。
(但し、この話にはオチがある)
ブケレ大統領の歴史的評価
ブケレ大統領は、自らのビットコイン投資に対する批判には「ガン無視」を決めこんでいるが、それはそれでいい。
長期投資は、1年や2年のパフォーマンスでとやかく言われる筋合いのものではないからだ。
特にドルコスト平均法の場合、投資開始直後から着実に値上りするよりも、いったん急落してからV字回復した方が利益は大きくなる。つまり大逆転はありうる。
ドルコスト平均法の基本に立ち戻ったブケレ大統領。その評価が定まるにはもう少し時間がかかりそうだ。