89社がすでに戦略採用、今後も拡大の見通し
暗号資産(仮想通貨)分野に特化した米投資銀行「Architect Partners(アーキテクト・パートナーズ)」のアナリスト、エリオット・チュン氏は28日、「2030年までにS&P500の4分の1が、長期資産としてバランスシートのどこかにビットコインを保有するようになるだろう」との見解を示した。
この予測は、企業によるビットコイン取得戦略の現状と今後について解説した同氏のレポートで言及されたものだ。
ビットコインを財務準備金として保有するという戦略は、2020年8月に「Strategy(ストラテジー、旧マイクロストラテジー)」によって初めて採用された。以降、同社は「企業によるビットコイン取得」という新たな戦略の先駆者となり、株価は2025年3月までに2,000%以上も高騰。これは、同期間のビットコインやS&P500を大きく上回るパフォーマンスである。ストラテジーは現在も506,137 BTCを保有しており、上場企業としては世界最大のビットコイン保有量を誇る。
その後も、ビットコイン取得戦略を採用する企業は年々増加している。企業やファンドのビットコイン保有量を分析する「Bitcoin Treasuries(ビットコイン・トレジャリーズ)」によれば、現時点でビットコインを保有している上場企業は89社。合計で、ビットコイン総供給量の約3.17%に相当する665,618 BTCを保有している。
さらに直近では、3月26日に米国のゲーム小売企業「GameStop(ゲームストップ)」が、ビットコインを取得するために転換社債を発行して13億ドルを調達すると発表した。この発表直後には株価が一時上昇したものの、翌日以降急落し、執筆時点では発表前の水準から約15%下落している。
チュン氏は、企業がビットコインを財務資産として保有する背景について、「法定通貨(具体的には米ドル)のインフレに対するヘッジとして機能し、財務の多様化とリスク管理のツールになるからだ」としたが、「ストラテジーのパフォーマンスを再現することを期待してこの戦略を実行している企業は、失望することになる」とも述べている。
その理由として、ストラテジーは「唯一無二の企業」であり、当時とは異なり、今では投資家がビットコインETFを通じて直接ビットコインにアクセスできる環境が整っていることを挙げた。すでにETFが存在する現在では、企業がビットコインを保有することに対して、ストラテジーが提供してきたようなアクセスの優位性や非対称的な上昇余地、あるいは「ビットコイン革新企業」としてのブランド力を再現することは難しいと分析している。
それでもチュン氏は、「さまざまな戦略と実装をすべて踏まえると」、冒頭の予想どおり、企業によるビットコイン取得は今後も拡大していくとの見方を示している。
チュン氏の主張をまとめると、ビットコイン取得戦略は”特別なもの”から”当たり前のもの”へと変化しつつあるということになる。「S&P500の4分の1が長期資産としてビットコインを保有」するようになれば、ビットコインの地位は確固たるものになる。ビットコインに対する社会的な評価を測る指標として、企業による取得状況を注視しよう。
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