二重国籍の容疑者、モロッコ法により現地裁判に
フランスで5月13日に発生した暗号資産(仮想通貨)に関連した誘拐事件の首謀者が、モロッコで逮捕されたことが明らかになった。ロイター通信が4日に報じたところによると、逮捕されたのはフランスとモロッコの二重国籍を持つバッジョウ・バディス・モハメド・アミデ容疑者。同容疑者は組織的犯罪、誘拐、恐喝などの容疑で国際刑事警察機構(ICPO、通称インターポール)により国際手配されていた。
今回の事件では、フランスの仮想通貨取引所「Paymium(ペイミウム)」のCEOであるピエール・ノワザット氏の娘と孫、その親族らが標的とされた。犯行グループは複数人で構成され、ノワザット氏の家族に対する誘拐を前日にも試みていたとされる。その計画性と暴力性からフランス当局は事件を重く見ていた。
フランス当局は5月31日、誘拐事件に関与したとして未成年者6名を含む25人を起訴。このうち18人が公判前の勾留下に置かれている。だが、起訴されたのは実行犯レベルの関与者が大半であり、この時点では首謀者の身元が明らかになっていなかった。
捜査関係者によれば、アミデ容疑者はモロッコ国籍を持つためフランスには引き渡されず、同国内でフランスの容疑に基づき裁判にかけられる見通しだという。今回の首謀者の逮捕により、誘拐事件の全容解明に向けた捜査が大きく進展することが期待されている。
また、アミデ容疑者は今年1月、同じくフランスで発生した別の仮想通貨関連誘拐事件への関与も疑われている。この事件では、仮想通貨ハードウェアウォレット企業「Ledger(レジャー)」の共同創業者デビッド・バランド氏とその妻が誘拐され、仮想通貨による身代金が要求された。2人は後に無事救出されたものの、バランド氏は犯人グループによって指を切断される重傷を負った。
フランスでは仮想通貨が浸透しつつある裏で凶悪な犯罪が深刻化している。だが、今回のような誘拐事件はフランスのみならず、どの国でも発生し得る可能性があるだろう。今後、犯罪防止や事件解決に向けた国際的な協力体制の強化が、いっそう求められることになりそうだ。
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