検閲を回避するステーブルコインは出現するか
暗号資産(仮想通貨)データ分析プラットフォーム「CryptoQuant(クリプトクオント)」の創業者兼CEOであるキ・ヨンジュ氏は11日、「将来的にダークステーブルコインが出現する可能性が高い」との見解を公式Xで示した。
キ氏は投稿の中で、「これまで各国政府がステーブルコインに対して比較的穏やかな姿勢を取ってきた」と指摘。この各国政府の対応が中国系のマイナー(仮想通貨採掘者)といった特定のグループにとって、ステーブルコインが資産を安全に保管する重要な手段になっていたと述べている。
だが同氏は、今後ステーブルコインが従来の銀行同様の厳しい規制を受ける可能性が高いと警鐘を鳴らしている。ステーブルコインはその匿名性や送金自由度の高さなどがユーザーにとってのメリットと言える。だが、その特性を悪用したマネーロンダリングといった違法行為への懸念から、国際的な監視強化の動きが進んでいるのも事実だ。
キ氏はステーブルコイン規制強化の動きの中で、スマートコントラクト活用による送金時の自動課税や政府指示に基づくウォレット凍結、各種書類提出の義務化が行われる可能性があると指摘。これらの対応が現実のものとなれば、国際送金目的でステーブルコインを活用してきた人々にとって大きな障壁になる可能性が高い。
こうした背景からもキ氏は、将来的に政府の検閲を回避できる新たなステーブルコイン、いわゆる「ダークステーブルコイン」が登場する可能性が高いと述べた。同氏はダークステーブルコインを実現手段として、政府管理下に置かれないアルゴリズム型ステーブルコイン、そして金融取引に対する検閲を行っていない国が発行するステーブルコインの2つの方法を挙げている。
しかし、既存のステーブルコインもダークステーブルコインに変貌する可能性があるとキ氏は語る。同氏はステーブルコインの最大手である「USDT(テザー)」を例に挙げ、「今後トランプ政権下において、テザー社が政府要求に従わない姿勢を取れば、USDTがダークステーブルコインと見なされる可能性がある」と述べた。
ステーブルコインは現在、規制と自由のバランスの中で大きな転換点を迎えている。ダークステーブルコインという概念の浮上は、仮想通貨業界が新たなフェーズに入りつつあることを示唆していると言えるだろう。ステーブルコインと各国の規制動向に今後も注視していきたい。
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