取引で負けるとトークンがもらえる先物取引所が、ローンチ直後から驚異的な収益を記録した。一方、株式を担保に金利0%でお金を借りられるサービスや、投資ファンドを償還日前に現金化する仕組みにも資金が集まっている。
魑魅魍魎がうごめく暗号資産の世界から、先週話題になったプロジェクトや興味深い動きを独自にピックアップする「週刊 クリプト探検録」。今週はPapertradeをはじめ、Spout、Fission、DATA Networkの4つを取り上げ、それぞれの仕組みや特徴、実際の進展を紹介する。
取引所、融資、投資ファンド、AIデータの4つの動き
1. Papertrade — 取引で負けるとトークンがもらえる、異色の分散型取引所
ローンチ前から多額のTVL(預かり資産総額)を集めて話題となった分散型先物取引所「Papertrade(ペーパートレード)」は、10月10日の取引開始からわずか9日間で累計取引高約1兆3,500億ドルを記録した。10月19日時点の公式ダッシュボードによると、利用者数は約2万2,800人、累計取引回数は約145万回に達している。
ペーパートレードでは、利用者が取引で損失を出すと、その資金が取引所内の共通資金プールに入り、利益を出した利用者への支払いなどに使われる。同時に、損失を出した利用者には独自トークン「PAPER」が発行される。PAPERをステーキングすると、取引所が得た収益の一部をUSDCで受け取れる。つまり、取引で負けた利用者が、その後の取引所収益から報酬を得られる仕組みだ。
その収益規模は驚異的だ。DeFiデータサイトのDefiLlamaによると、19日時点の直近7日間の収益は約3,056万ドルに達し、テザー、サークルに次ぐ全体3位となった。ハイパーリキッドやPump.funを大きく上回る水準だ。収益の中心はトレーダーの損失であり、実際に利用者全体の累計損益は約6,320万ドル(訳99億円)のマイナスとなっている。一方、PAPERのステーキング報酬は累計約5,410万ドル(約85億円)に達した。

PAPERの報酬を狙い、意図的に取引で損失を出す動機も生まれている。ブロックチェーン分析企業Lookonchainによると、あるトレーダーは約98万ドル(約1.5億円)の取引損失と引き換えに2億5,200万PAPERを獲得。その後、ステーキング報酬として約173万ドル(約2.7億円)相当のUSDCを受け取り、差し引き約75万ドル(約1.1億円)の利益を得た。
さらに、保有するPAPERも、ハイパーリキッドの先物価格で換算すると約604万ドル(約9.5億円)相当になる。ただし、PAPERはすでに発行されているものの、プロトコル内に閉じているため、現物市場がまだ存在しない。そのため、この金額は先物価格に基づく推定評価額であり、実際に換金できる利益ではない。
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2. Spout — 株式を担保に金利0%で借りられるレンディングサービス
ソラナ上で融資サービスを開発する「Spout Finance(スパウト・ファイナンス)」は10月15日、200万ドル(約3.1億円)の資金調達を発表した。出資者にはドレーパー・ドラゴン、アンカレッジ・デジタル、フロー・トレーダーズなどのほか、エンジェル投資家としてソラナ共同創設者のアナトリー・ヤコヴェンコ氏も名を連ねる。
スパウトは、トークン化された米国株式を担保に、評価額の50%までUSDCを金利0%で借りられる仕組みを開発する。例えば、1万ドル相当の株式トークンを預ければ、5,000 USDCを借りられる設計だ。
通常の融資では、借り手が支払う利息が貸し手の収益となる。一方、スパウトでは利息を取らず、代わりに担保株式の値上がり益の一部を収益に変える「カバードコール」というオプション取引を利用する。
例えば、現在100ドルの株式について、将来120ドルで買える権利を他の投資家に売る。この権利には価値があるため、買い手は対価として「オプション料」を支払う。スパウトはこの収益の20%を手数料として受け取り、残りの80%を融資の資金提供者に分配する仕組みだ。
この仕組みでは、借り手は利息を支払わない代わりに、株式の値上がり益の一部を手放す可能性がある。例えば、株価が150ドルに上昇して120ドルで買う権利が行使されると、借り手はその差額である30ドル分の利益を失う。また、株価が反対に大幅下落した場合には、担保不足によって借り手の株式が強制売却されるリスクもある。
現在はソラナのテスト環境でベータ版を提供しており、本番ネットワークではまだ稼働していない。
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3. Fission — 投資ファンドを償還日より前に現金化するサービス
「Fission(フィッション)」は10月15日、シリーズAで1,000万ドル(約15億円)を調達した。パンテラ・キャピタルがリードし、サークル・ベンチャーズ、ボーダーレス・キャピタルなどが参加した。
投資ファンドの持分をブロックチェーン上でトークンとして発行することで、投資家への販売や持分の移転、決済の方法は大きく変わりつつある。しかし、トークン化されても、ファンドの償還日が月次や四半期ごとに限られていたり、持分を売却できる相手が少なかったりする問題は残っている。
フィッションは、こうした問題を解決するため、トークン化されたファンドの持分を通常の償還日より前に現金化できるサービスを提供する。具体的には、ファンド側の償還・決済は従来どおりの日程で進めながら、フィッションが保有者の持分をUSDCで買い取る。これにより、投資家はファンドの償還を待たずに資金を回収できる。
こうした買い取りに必要な流動性は、従来型金融とオンチェーンの双方の資金源を活用して確保する。同社によると、すでに数百万ドル規模の取引を処理しており、今回の調達資金は対応ファンドの拡大や流動性供給能力の強化に充てられる。
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4. DATA Network — AI学習データの権利を管理するネットワーク
AI学習データの権利管理基盤を運営する「DATA Network(データ・ネットワーク)」は10月12日、ブロックチェーン「Sui(スイ)」の普及を支援するスイ財団から3,000万ドル(約47億円)の投資を受けると発表した。これに伴い、独自に運営してきたブロックチェーンを廃止し、データの登録履歴や利用権限を記録する基盤をスイへ移行する計画だ。
データ・ネットワークは、AI企業が学習に利用する画像、音声、動画などについて、提供元や利用許諾を記録する「Trace(トレース)」を運営する。AI開発では大量のデータが必要となる一方、それぞれのデータを誰が提供し、どのような条件で使用できるのかを確認することが課題となっている。
トレースには、Kled(クレッド)、Numo(ヌモ)、Oto(オト)などのデータ収集アプリが接続している。利用者がこれらのアプリを通じて提供したデータの出所や利用条件をトレースが記録し、AI企業はその条件に従ってデータの利用権を取得する。データ提供者には対価が支払われ、集められたデータはAI開発企業やロボット関連企業など提供されているという。
6月のサービス開始以来、登録件数は2億5,000万件を超え、現在は1日平均300万件以上の記録を処理している。今回の移行では、分散型ストレージ「Walrus(ウォルラス)」も採用する。これまで記録してきた権利情報に加え、暗号化された元データも保存することで、データ購入者が登録情報と実際のファイルの一致を検証できるようにする計画だ。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.8円)
