金融庁は20日、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第1回会合を開き、配付資料を公表した。ステーブルコインや株式・国債のトークン化、分散型取引所(DEX)や分散型金融(DeFi)について、法制度の課題を話し合う。
議事次第の公表は、JinaCoinの規制トラッカーが速報していた。会合では事務局の説明に続き、野村ホールディングス(8604、野村HD)とSecuritize Japanから聞き取りをした。
金融庁の同名の研究会、2023年以来の再開
同じ名前の研究会は2021年7月に設けられた。同年11月に中間論点整理をまとめ、2023年11月までに12回開いている。今回は令和8事務年度の第1回として開いた。
事務局資料によると、政府が7月21日に策定した金融戦略は、ブロックチェーンを基盤とするオンチェーン金融の推進を掲げた。9月30日に初会合を開いたAI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラムとは別に、制度の環境整備をこの研究会で検討する。
座長は東京大学名誉教授の神田秀樹氏で、座長を含め大学教授や弁護士など15人が名を連ねる。日本暗号資産等取引業協会や日本銀行、財務省などがオブザーバーとして参加する。
株式や国債のオンチェーン化、振替制度が課題に
事務局は、ステーブルコインと預金のトークン化、セキュリティトークン、DEX・DeFi、振替制度、証券決済の短縮化の5つを論点に挙げた。そのうえで、法制度の課題として優先して検討すべき分野はあるかを委員に問いかけた。
資料によると、国内では、振替口座で管理する国債や社債、投資信託、株式をブロックチェーン上で取引する仕組みはまだ実現していない。振替制度は、株式などの権利関係を振替口座簿の記録で決める仕組みで、証券保管振替機構と日本銀行が振替機関を担う。
事務局は、ブロックチェーンで共通の台帳を持つ場合の責任主体と監督、振替機関が各加入者の保有量を直接把握できるようになることを踏まえた口座管理機関の役割、振替の手続きを課題に挙げた。
米国の証券保管振替機関DTCCは2025年、米証券取引委員会(SEC)からノーアクションレター(法令違反として措置をとらないとする回答)を受け、トークン化の取り組みを始めた。
資料は、DTCCが10月にトークン化サービスを正式に始める予定だとした。日本は振替機関自身の口座を開ける目的が限られ、現行法ではDTCCのようにトークン化用の一括口座を設けるのは難しいとも指摘している。
DEXについては、2025年12月の暗号資産制度に関するワーキング・グループの報告を引用した。DEXにつなぐアプリなどの画面を国内向けに提供する事業者について、まず実態の把握を深める必要があるとした部分だ。トークン化資産の世界の累計発行額は、7月時点で350億ドル(約5.5兆円)を超えたという。
野村HDは10の課題、Securitizeはパブリックチェーン前提を提言
野村HDのデジタルアセット戦略推進部長、佐々木俊典氏は、米国はオンチェーン金融の実用化段階にある一方、日本は実証段階で1段階遅れていると説明した。そのうえで、実務と法制度の10の課題を示した。主なものは次のとおり。
- 現行の振替法を生かし、国債や上場株などのオンチェーン化を急ぐ
- 日銀当座預金や銀行預金をブロックチェーンで使えるようにし、金融機関向けの決済手段を確立する
- DeFiとウォレットの規制を、海外と同じ水準にする
- 海外発行のステーブルコインを国内で扱う場面などでの、100万円を超える保有・移転の制約を見直す
- 受益権原簿などの記録を信じて取引した人を保護する、権利推定や善意取得の法整備
Securitize Japanは、世界の大手運用会社がトークン化ファンドに参入している動きを紹介した。日本への提言として、パブリックブロックチェーンを前提にした制度設計を基本とし、証券保管振替機構の見直しを含めた法整備を急ぐよう求めた。
国際的な互換性を欠く独自路線は、時間とコストがかかるうえ、海外との差をさらに広げかねないとも指摘している。
事務局資料によると、国内の円建てステーブルコインは、資金移動業型のJPYCが2025年10月、信託型のJPYSCが2026年6月に発行された。JinaCoinのJPYCダッシュボードでは、JPYCの総流通量は20日22時20分時点で約32.7億JPYCとなっている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.98円)
