クロスチェーンブリッジ「Across Protocol」、4,100万ドル調達

木本 隆義
11 Min Read
画像はAcross Protocol公式Xより引用

インテント駆動でクロスチェーン取引を効率化

クロスチェーンブリッジプロトコルの「Across Protocol(アクロス・プロトコル)」は4日、米国のWeb3特化型投資会社「Paradigm(パラダイム)」が主導するトークンセール(資金調達ラウンド)において、4,100万ドルの資金調達を行ったと発表した。

今回のトークンセールによって、61億円規模の資金が集まった。従来、VCといえばITスタートアップへの「数億から数十億円」規模の投資が注目されてきたが、いまや暗号資産(仮想通貨)プロジェクトでも同様の数字が“当たり前”になりつつある。この資金調達はACXトークンの販売を通じて行われた。

Ethereum(イーサリアム)のスケーラビリティ問題を解決しようと、新手のレイヤー2が次々と台頭している。手数料が下がり処理速度が上がるのはユーザーにとって好ましいが、チェーンが増えれば資金移動が煩雑になり流動性が分断される。アクロス・プロトコルは「インテント駆動型」という手法を採用し、ユーザーが「こうしたい」と思えば、最適なルートでブリッジしてくれるしくみを志向している。ブリッジにはセキュリティリスクがつきものであり、実装や監査には手間も費用もかかるため、資金を潤沢に確保する必要があるというわけだ。

今回のラウンドで主導権を握ったパラダイムのほか、「Bain Capital Crypto(ベイン・キャピタル・クリプト)」「Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)」「Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)」といった錚々たる投資会社が名を連ねる。まさに“暗号界の親分衆”の結集だ。さらにポッドキャスターであるシナ・ハビビアン氏までもがエンジェル投資家として参画しているという。今やポッドキャスターが投資を行う時代になった点に暗号業界の裾野の広がりを感じるし、隣のオジサンがトークンを購入する時代だと改めて思い知らされる。

アクロス・プロトコルは調達資金をプロダクト開発やエコシステムの拡大に振り向ける。具体的にはブリッジ基盤の改良、エコシステム全体との連携強化、クロスチェーン・インテント実行技術の高度化など、“フル装備”のブリッジを実現しようとしている。イーサリアム圏のブリッジはハッキングリスクが常に取り沙汰されるため、安全性と信頼性の強化が欠かせない。豊富な資金があれば高水準の監査を受けられるほか、開発メンバーを増強できるのは当然である。投資家が躊躇なく資金を投入する背景には、こうした意義がある。

アクロス・プロトコルは「チェーンが増えすぎて不便だ、ならばまとめてやろう」という発想で巨額資金を獲得した。投資家の顔ぶれはビッグネーム揃いで、ブリッジ技術やエコシステム拡充を推し進める。ただし、クロスチェーンは魔法ではないし、過去にセキュリティリスクが問題視されたこともある。もしも「どのチェーンかを意識せず使える世界」が実現すれば、それは仮想通貨黎明期からの夢にかなり近づくはずだ。個人的には“チェーン統合”といううねりに大いなる期待を寄せたい。

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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