米SEC、XRP・LTC現物ETFの審査を開始──TRXステーキングETFも申請受理

伊藤 将史
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

アルトコインETFの審査本格化で市場に期待感

米証券取引委員会(SEC)は22日、複数の暗号資産(仮想通貨)現物ETFに関する新たな動きを発表した。これには、XRPライトコイン(LTC)に関連するETFの申請に対する「手続き開始命令」や、トロン(TRX)のステーキング報酬を組み込んだETFの申請が正式に受理されたことなどが含まれ、市場の注目を集めている。

5月22日に発表された仮想通貨ETFの審査状況・進捗は以下のとおり。

資産・テーマETF名称申請取引所ステータス
XRPBitwise XRP ETFCboeBZX手続き開始命令
XRPCoinShares XRP ETFNASDAQ手続き開始命令
XRPCanary XRP TrustCboeBZX手続き開始命令
LTCCoinShares Litecoin ETFNASDAQ手続き開始命令
TRX
(ステーキング)
Canary Staked TRX ETFCboeBZX申請受理通知(Notice of Filing)
BTC・ETH
(現物)
・Fidelity Wise Origin Bitcoin Fund
・Fidelity Ethereum Fund
CboeBZX現物拠出・償還に関する規則変更案の審査開始
ETH
(ステーキング)
21Shares Core Ethereum ETFCboeBZXステーキングを許容する規則変更案の審査開始
BTC・ETH・
仮想通貨インデックス
・Franklin Bitcoin ETF
・Franklin Ethereum ETF
・Franklin Crypto Index ETF
CboeBZX判断期間の延長通知(Notice of Designation of a Longer Period)

上記のとおり、今回の発表では、複数の運用会社によるXRPおよびライトコインの現物ETF申請について、SECが承認または不承認を決定するための正式な審査手続きを開始したことが示された。また、「Canary Capital(カナリー・キャピタル)」によるトロンのETF申請は「ステーキング報酬の付与を可能とする構造」であり、申請が受理された段階である。さらに、既存のビットコインETFやイーサリアムETFに関しても、現物での拠出・償還やステーキングを許容するための規則変更案に対して審査手続きの開始や判断期間の延長が通知されている。

SECによるETF審査プロセスとは

SECによるETFの承認プロセスは、一般的に以下の段階で進む。

  1. 申請と受理:資産運用会社がETFを上場させたい取引所(例:CboeBZX、NASDAQなど)を通じてSECに上場申請(通常は取引所による規則変更案として提出)を行う。SECが形式要件を満たしていると判断すれば「申請受理の通知(Notice of Filing)」を発出し、パブリックコメント期間が開始される。
  2. 審査と検討:SECは提出書類、パブリックコメント、その他情報をもとに、証券取引法や投資家保護の観点から審査を行う。
  3. 追加の審査手続き:
    • 手続き開始命令(Order Instituting Proceedings):SECが、提出された申請についてより詳細で慎重な検討が必要と判断した場合に発出される命令。これにより、パブリックコメントの追加募集や公聴会の開催が行われることもある。審査の正式な深掘り段階に入ったことを意味し、しばしば「最終判断の先送り」と受け取られる。今回のXRP ETFやライトコインETF、既存のビットコイン・イーサリアムETFの規則変更案の多くがこの段階にある。
    • 判断期間の延長(Notice of Designation of a Longer Period):SECは法律で定められた期間内に判断を下す必要があるが、審査に時間を要する場合は、期限の延長を公式に通知する。
  4. 最終決定:承認(Approval)、もしくは非承認(Disapproval)が通知される。

ETFがSECに申請されてから承認・非承認までには、上記のように複数の審査段階を経るため、一定の時間がかかるのが通例である。

今回、SECがXRPやライトコインといった主要アルトコインの現物ETF申請に対して一斉に手続き開始命令を出したことは、これらの審査が本格化したことを示している。ただし、これは承認を保証するものではなく、今後数ヶ月にわたり、パブリックコメントの募集やSEC内部での詳細な検討が行われることになる点には注意してほしい。

ビットコイン現物ETFが2024年初頭に承認された後、市場の関心はイーサリアム現物ETF、そしてそれに続く他のアルトコインの現物ETFへと移っている。各ETFの最終的な承認可否は市場にも大きな影響を与えるとみられるため、引き続きSECの判断を注視していく必要がある。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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