ステーブルコイン利益構造のコペルニクス的転回
テザー初代CEOのリーブ・コリンズ氏が関与する、利回り型ステーブルコインを採用したプロジェクト「Pi Protocol(パイ・プロトコル)」が2025年後半にローンチ予定であることが18日、報じられた。
従来のステーブルコインは、利用者が為替リスクを回避できる反面、発行体が国債などの運用益を独占するケースが多かった。テザーやUSDCの発行体は、準備資産の運用益を得る構造を取ってきたが、パイ・プロトコルは発行者だけでなくミンターにも利回りを還元する仕組みを導入し、従来のモデルを変革しようとしている。
パイ・プロトコルでは、国債やマネーマーケットファンド、保険商品などの実世界資産(RWA)を担保に用い、独自のスマートコントラクトを通じてステーブルコイン「USP」を発行する。USPのミンターには、追加の報酬として「USI」トークンが付与される。
利回りを提供できるかどうかは、機会費用の観点で大きな意味をもつ。銀行預金と比べて高い金利を提示できれば、ステーブルコイン自体を保有する動機が強まる。資本の再配分や投資家心理にも影響し、ステーブルコインが投資対象として一段と注目を集める余地を生む。
コリンズ氏にとって古巣のテザーは、大きな流動性とネットワーク効果を誇り、パイ・プロトコルが即座に同地位に迫るのは容易ではない。しかし、パイ・プロトコルが安全性と利回りを両立できれば、じわじわとシェアを奪う可能性もある。競争が激しくなれば、テザーも新たな施策を模索する可能性があり、金融イノベーションがさらに加速する展望がある。
魅力的な利回りには、担保価値の変動やプロトコル上のリスクといった課題も伴う。ペッグが崩れれば一気に信用を失うため、バランスの取り方が肝要だ。また、高金利の時代に「利回りを提示できないステーブルコイン」には魅力が乏しいという見方も強まっている。
今後「利回りが付くステーブルコイン」への需要は高まるとみられる。テザーやUSDCとの競合、参入企業の相次ぐ模索などが重なり、ステーブルコイン市場は新たな局面を迎えつつあるようだ。