イーサリアムL2「インク財団」、新トークン「INK」発表──Aave基盤のDeFiで活用へ

木本 隆義
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

初期ユーザーにエアドロップ予定

Ethereum(イーサリアム)の処理能力を向上させるレイヤー2ブロックチェーン「INK(インク)」を管理する「Ink Foundation(インク財団)」は18日、新たな暗号資産(仮想通貨)「INKトークン」をローンチする計画を発表した。

INKトークンは、インク財団が推進する「インクエコシステム」全体で共通に使えるよう設計された新しいトークンである。そのねらいは、広範なエコシステムに散らばるユーザー、プロトコル、開発者たちを「INK」という共通の旗印の下に結集させることにある。財団が描く未来図は、貸付から取引、さらにはその先まで、あらゆる金融活動がINKトークンによって駆動する、巨大な分散型金融(DeFi)経済圏の創出だ。しかも、その経済圏は、ユーザー自身が統治し、その成功が直接ユーザーの利益に結びつくことを目指している。

財団はまず、この理想の実現に向け、INKトークンを10億枚発行する計画である。この供給量は完全に固定され、将来的にガバナンスによって変更されることはないと断言している。まさに、インフレとは無縁の“デジタルゴールド”を目指すかのようだ。しかし、発行日やその他の詳細については、今のところ「後日発表」とされており、市場の憶測を呼んでいる。

ここで注意すべきは、INKトークンがインクの基盤技術であるレイヤー2ブロックチェーンの運営方針を決める「ガバナンス」には一切関与しない点である。この領域は、引き続きOptimism(オプティミズム)のスーパーチェーン構想の一部として、既存のルールが適用される。つまり、INKトークンはあくまで経済圏の活性化を担う「経済トークン」であり、インフラの根幹を左右する「政治トークン」ではない、という明確な線引きがなされている。

では、この鳴り物入りで登場するINKトークンの最初の使い道は何であろうか。その答えは、DeFi業界の巨人として名高いAave(アーベ)の技術を活用した、ネイティブな流動性プロトコルの構築にある。これは、インクが目指すDeFiスタックにおける、きわめて重要な「新たな礎」となる。そして、このプロトコルこそが、INKトークンによるガバナンスとインセンティブ付与の最初の実験場となる。

インク財団の思惑は明らかだ。アーベの洗練された技術が可能にする「集約された流動性」を土台として提供することで、ユーザーや開発者がブロックチェーン上で革新的なアプリケーションや新機能を次々と生み出すためのプラットフォームを創造したいのであろう。いわば、新たな金融イノベーションを誘発するための、戦略的な「呼び水」だ。

そして、この呼び水に群がる初期ユーザーには、INKトークンの無償配布(エアドロップ)が予定されている。インク財団は、流動性プロトコルの初期参加者に対し、報酬としてINKトークンを配布する計画を明らかにしている。こうした無償配布には、不正取得を狙う「エアドロップ・ファーマー」たちが群がるのが常である。これに対し財団は、業界最高水準のシビル攻撃対策を講じることで、配布の公平性を最大限に確保する構えを見せている。しかしながら、このエアドロップの詳細はというと、現時点では未公開だ。続報を待ちたい。

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
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