ステーブルコインの100万円上限、JPYCなどが見直し要望──全銀協は慎重

ステーブルコインの100万円上限、JPYCなどが見直し要望──全銀協は慎重
shoko-koyama
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Highlights
  • 金融庁が2日の研究会で、ステーブルコインの裏付け資産・100万円の移転上限・レンディング・銀行本体の発行の4点を論点に提示
  • JPYCは発行の上限、SBI VCトレードは4号の外国ステーブルコインの上限で見直しを要望、全国銀行協会は第二種の上限だけの緩和に慎重
  • SBI VCトレードが顧客から借りている電子決済手段のレンディング残高は107億円程度、うち円建てのJPYSCが76.5億円

金融庁は2日、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の第2回会合の資料で、ステーブルコイン(電子決済手段)の制度について、裏付け資産、1件100万円の移転上限、レンディング、銀行など預金を扱う金融機関の本体による発行の4点を論点に挙げた。

聞き取りの資料では、JPYC株式会社が発行の上限の見直しを求め、SBI VCトレードは外国のステーブルコインのうち4号電子決済手段の上限の撤廃が望ましいとした。全国銀行協会(全銀協)は、第二種資金移動業の上限だけを撤廃・緩和することに極めて慎重な検討を求めた。事務局は4点とも「どう考えるか」と問う形で、100万円上限の見直しの方向は示していない。

金融庁が示したステーブルコインの4つの論点

議事次第によると、会合は2日10時〜12時(日本時間)に開き、事務局の説明、3者からの聞き取り、討議の順に進める予定だった。

議事次第の公表は、JinaCoinの規制トラッカーの速報が取り上げていた。

事務局は電子決済手段について論点ごとに現行制度を整理し、それぞれの最後に「ご議論いただきたい事項」を示した。

論点現行制度(事務局資料)事務局の問いかけ
裏付け資産信託型は6月施行の改正で、発行額の50%を上限に残存3か月以内の国債などでの運用が可能に。海外の裏付け資産の規制は多くが未施行海外の規制動向を踏まえ、現行制度をどう考えるか
100万円の移転上限資金移動業者が発行するステーブルコインと外国のステーブルコインは、1件100万円の上限と滞留規制の対象現行制度の趣旨を踏まえ、どう考えるか
レンディング包括的な規制はない(電子決済手段等取引業者が行う場合は、分別管理されない旨の説明などが必要)。暗号資産(仮想通貨)の借入れは2026年改正金商法で業規制の対象に加える規制のあり方をどう考えるか
銀行本体の発行金融審議会の作業部会の報告(2025年1月)で、中長期的に検討するのが適切と整理トークン化預金や信託型がある中、どう考えるか
出典:金融庁の事務局説明資料をもとにJinaCoin作成

100万円の上限は、ステーブルコインを発行する資金移動業者が、1件100万円以下の送金に限られる第二種資金移動業者として発行することが想定されているためにかかる。

事務局資料によると、上限のない第一種には、資金を受け入れる際に送金額・送金日・送金先が明らかでなければならない厳格な滞留規制があり、ステーブルコインの発行では満たすのが難しい。

事務局は、第二種は週1回以上必要額を算定し、3営業日以内に保全する仕組みのため、利用者資金が急増し、保全するまでの間に業者が破綻すると、保全額が足りない可能性があるとも説明している。

レンディングについて事務局は、利用者が事業者の信用リスクを負う一方、暗号資産に比べて価格変動リスクは小さいと整理した。ステーブルコインが金銭に当たる場合は、出資法の預り金規制との関係にも留意が必要だという。

100万円上限、JPYCなどが見直し要望・全銀協は慎重

円建てステーブルコインJPYCJPYCJPYCを発行するJPYC株式会社は、上限が効くのは発行の段階だと説明した。同社の説明では、利用者が自分で管理するウォレット(アンホステッドウォレット)からJPYCを移す取引は上限の対象外だが、自治体や企業が原資をまとめてJPYCに換える発行が1件と数えられる。

JPYCの流通規模は、JinaCoinのJPYCダッシュボードで執筆時点(2日17時10分、日本時間)約29.95億JPYCだ。

同社の資料が挙げた例では、住民10万人に5万円ずつ配る給付金は、原資50億円をJPYCに換えるのに5,000回に分ける必要がある。100人分の給与5,000万円は50回、AIエージェントに渡す月2,000万円の予算は20回になる。

訪日客への免税還付も、事業者が還付原資をまとめて換える段階で上限に当たるという。

同社は、全額保全と償還義務を条件に発行の上限を見直すよう求め、進め方として2段階を示した。まず、受取人ごとの配分が1件100万円以下に区分できる場合のまとめての発行の扱いの整理を挙げた。

次に、国・自治体や銀行・証券会社などを相手とする発行と、上場法人など本人確認済みの法人を相手とする発行で、上限の撤廃か別枠の設定を要望した。

あわせて、電子決済手段等取引業者による国内のステーブルコインの買い取りを上限の外とガイドラインなどで明確にし、外国のステーブルコインの買い取りも同様に見直すよう求めた。相手方の限定や取引の監視の強化、資産保全の頻度を上げるといった追加の利用者保護策も検討するとした。

SBI VCトレードは、外国のステーブルコインの上限を取り上げた。同社は米ドル建てのUSDCUSDCUSDCとRLUSDRLUSDRLUSDを、1回100万円相当までの売買・出庫、100万円相当までの預かり残高で運用している。月末残高が100万円を超える状態が6か月続くと、買い取りなどで解消する。

同社によると、法人からはクロスボーダー送金や企業間の大口決済に使いたいとの引き合いが多いが、上限のために実現できていない。

同社は、日本の制度との同等性を要件とする4号電子決済手段について、移転・保有の上限と買い取りなどの措置を先行して撤廃することが望ましいとした。今回の要望で対象に挙げたのは4号で、同社の資料の区分で1号に当たるUSDCは挙げていない。RLUSDは4号に当たる。

全銀協は、第二種資金移動業の1件100万円の上限について、登録制の第二種と認可制の第一種を分ける制度上の重要な境界と位置付けた。第二種の登録制や資産保全などの枠組みを維持したまま、上限だけを撤廃・緩和することは極めて慎重に検討されるべきだとした。

理由には、保全までの時間差(土日祝日をはさむと10日を超え得る)、供託を使う業者が破綻した場合に利用者が資金を受け取るまで最低170日かかる可能性、償還の集中などによる金融システムへの影響、マネーロンダリング・テロ資金供与対策上のリスクを挙げた。

高額な電子決済手段は、認可制の第一種資金移動業で扱うのが基本だという。

10月20日の研究会の第1回会合の資料では、野村ホールディングス(8604)が、外国のステーブルコインと第二種資金移動業での、100万円を超える保有・移転の制約の見直しを求めていた。

SBI VCトレードのレンディング残高約107億円

SBI VCトレードは、レンディングサービス「貸コイン」の仕組みを説明した。顧客から消費貸借で借りたステーブルコインを暗号資産市場で運用し、運用収益から同社の取り分を差し引いて、利用料として顧客に支払う。

対象はUSDC(3月から)と、SBI新生信託銀行が発行する円建ての信託型ステーブルコインJPYSCjpyscjpysc(7月から)の2銘柄。同社の資料の時点で、顧客が同社に貸し出している残高は2銘柄の合計で107億円程度。うちJPYSCが76.5億円と約7割を占める。

USDCは100万円の上限を考慮し、1回の募集の上限を5,000 USDC(約79万円)に設定している。

商品は期間固定・中途解約不可で、同じ銘柄で返す設計とした。預金ではないため元本保証や預金保険、分別管理の対象外であることや、同社が倒産した場合の返還リスクを顧客に示しているという。

同社は、ステーブルコインのレンディングに係る業規制は未定だとしたうえで、暗号資産と同様の業規制は顧客の安心感を高めることにつながるとしている。

銀行本体の発行、全銀協はニーズが明確でないとの見解

銀行など預金を扱う金融機関の本体による発行について、全銀協は、3号電子決済手段(信託型)とトークン化預金で活用の可能性を見極める取り組みが進む一方、本体による1号電子決済手段の発行は、現時点では「直ちに進めるべき具体的なニーズが明確になっている状況にはない」との見解を示した。

全銀協は、本体で発行できれば、信託を使う3号に比べて契約関係や業務運営を簡素にできる余地があると説明した。ただし、想定される主なユースケースの多くは3号やトークン化預金でも対応できる可能性があり、1号に固有の優位性は明確になっていないという。

事務局資料によると、米国のステーブルコイン規制法(GENIUS法、2027年1月施行予定)は、預金を扱う金融機関の本体による発行を原則として禁じる。

香港では10月に銀行本体がステーブルコインを発行したが、同地域の制度は、銀行の健全性規制とは別に倒産隔離による利用者資産の保全を求めている。資料によると、銀行本体の発行を認める国・地域でも、ステーブルコインは預金保険の対象外だ。

討議の内容は、執筆時点で公表されていない。金融庁は、聞き取りをした各社の資料は各社の見解に基づくもので、同庁の見解ではないと注記している。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.69円)。USDCは1 USDC=1ドルとして換算

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仮想通貨歴6年。ニュース記者歴4年。常に仮想通貨ニュースを追う。情報ソースを追究し正しい情報をわかりやすく伝えることに努めている。仮想通貨は下落するたび買い増すタイプで、主にステーキングで資産運用中。
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