米連邦捜査局(FBI)は米国時間10月31日、暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスから60億ドル超(約9,463億円超)の暗号資産が盗まれた事案を、北朝鮮の犯行と公式サイトで公表した。関連するアドレス628件を示し、米シークレットサービスなどとともに民間の事業者に取引の遮断を求めた。
FBI、バイナンス流出を北朝鮮TraderTraitorの犯行と公表
FBIによると、北朝鮮は10月29日ごろ、バイナンスから60億ドル超の暗号資産を盗んだ。FBIはこの北朝鮮のサイバー活動をTraderTraitorと呼んでいる。FBIのサイバー部門は、日本時間1日7時36分にXでも同じ内容を投稿した。
バイナンスは日本時間31日の報告で、ホットウォレットが侵害された時刻を29日20時5分(UTC、日本時間30日5時5分)ごろとしていた。
FBIは、米シークレットサービス(USSS)、米内国歳入庁犯罪捜査部(IRS-CI)とともに、盗まれた資産が主にイーサリアム(ETH)
ETHに換えられているのを確認したという。FBIは、資産がDeFi(分散型金融)や即時交換のサービスでさらに換えられ、資金洗浄が進むとみている。
北朝鮮の犯行との判断は、これまでブロックチェーン分析会社が示していた。TRM Labsは10月30日、TraderTraitorによるものと高い確度で判断したと公表し、チェイナリシスも同日、北朝鮮の犯行と高い確度で判断しているとXに投稿した(分析会社2社の判断)。
バイナンスは日本時間1日14時5分、FBIの投稿を引用し、FBIのサイバー部門の支援に感謝するとXで述べた。創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏は同日14時45分のXで、FBI、USSS、内国歳入庁(IRS)など米国の法執行機関が、追跡や凍結などで欠かせない支援をしたと謝意を示した。
USSSは日本時間2日3時11分のXで、事案の捜査を続けているとし、発生から数分のうちに業界と協力して、盗まれた資金のかなりの部分の特定と凍結に動いたと説明した。
金融庁は2021年6月、無登録で暗号資産交換業を行う者として、海外のバイナンスを運営するBinance Holdings Limitedに警告書を出した(金融庁が警告した無登録業者の一覧)。
金融庁の警告無登録業者
Binance Holdings Limited警告2回
- 警告書の掲載
- 2018年3月、2021年6月
- 所在地(当時)
- 不明(海外)
掲載内容は、金融庁が警告書を出した時点のもの。現在も同じ状況であることを示すものではありません。
FBI、関連アドレス628件との取引の遮断を要請
FBI、USSS、IRS-CIは、THORChainのノード(THORNode)運営者、RPCノード運営者、即時交換業者、DeFi、ブロックチェーン分析会社などに、TraderTraitorが資金洗浄に使うアドレスとの取引と、そこから派生した取引を止めるよう求めた。
FBIのページに載ったアドレスは、イーサリアム形式が608件、ビットコイン(BTC)
BTCが19件、ソラナ(SOL)
SOLが1件の計628件だ。
FBIは、盗まれた資産を保有している、または保有していたアドレスで、TraderTraitorが運用しているか密接に関わっていると説明している。
JinaCoinがブロックエクスプローラーのmempool.spaceで、ビットコインの19件を確かめたところ、日本時間2日9時29分時点の残高は計1万8,270.20BTCだった。
17件が約1,000 BTCずつ持ち、残る2件は約832.5 BTCと約437.7 BTCを持つ。19件とも受け取った額と残高が同じで、送り出した記録はない。
JinaCoinの価格データによると、2日9時30分時点で1 BTC=1,229万1,908円で、残高は約2,246億円にあたる。
イーサリアムのノードに問い合わせると、イーサリアム形式の608件は同じ時点でいずれもETHの残高があり、合計は約55万1,612ETH(約1,974億円)だった。最も多いアドレスは約19万7,460ETHを持つ。ステーブルコインなどトークンの残高は含めていない。
ソラナのノードで確かめると、ソラナの1件には同じ時点で約46万6,694SOL(約69億円)があった。円換算には、JinaCoinのイーサリアムの価格データとソラナの価格データの2日9時30分時点の値(1 ETH=35万7,842円、1 SOL=1万4,813円)を使った。残高は資金が動けば変わる。
FBIは過去にもDMM Bitcoinやバイビットの流出を特定
FBIは2024年12月、警察庁などと合同で、同年5月に当時の国内の暗号資産交換業者DMM Bitcoinから4,502.9 BTCが盗まれた事案を、TraderTraitorの犯行と特定したと公表した。警察庁は被害を約482億円相当としている。
2025年2月には、海外取引所バイビットから約15億ドル(約2,366億円)が盗まれた事案を、発生の5日後にTraderTraitorの犯行と公表した。当時示したのはイーサリアムのアドレス51件で、遮断の要請先にTHORChainのノード運営者は挙げていなかった。
| 被害を受けた取引所 | 流出の時期 | FBIの公表 | 流出額(FBIなど) | FBIが示したアドレス |
|---|---|---|---|---|
| DMM Bitcoin | 2024年5月 | 2024年12月23日 | 4,502.9 BTC(約482億円相当) | 記載なし |
| バイビット | 2025年2月21日ごろ | 2025年2月26日 | 約15億ドル(約2,366億円) | イーサリアム51件 |
| バイナンス | 2026年10月29日ごろ | 2026年10月31日 | 60億ドル超(約9,463億円超) | イーサリアム形式608件、ビットコイン19件、ソラナ1件 |
FBIは、情報を持つ人に、最寄りのFBI支局かインターネット犯罪苦情センター(IC3)へ連絡するよう呼びかけている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.72円)
