量子時代に向けたブロックチェーンの進化
イーサリアム財団は4日、「暗号技術の最前線に立つ新たな研究組織」として「ZKnox」を公式に紹介し、財団から助成(グラント)を行うことを明らかにした。
イーサリアム財団がZKnoxを支援するという話題は、実に興味深い。イーサリアムは世界の分散型コンピュータを目指すプラットフォームであるが、量子コンピュータが登場した場合、従来の暗号方式が破綻しかねないという懸念がたびたび指摘されてきた。ZKnoxはそのリスクに備えるプロジェクトであり、財団による助成プログラムや技術支援の後ろ盾を得た事実は大きい。「備えあれば憂いなし」という言葉があるが、今はまさにその局面であるといえる。
イーサリアム財団がZKnoxに資金を投入したことは分かりやすい支援策だが、それ以上に重要なのが技術コミュニティによるバックアップである。財団の支援のもと、技術コミュニティがZKnoxの研究をバックアップし、量子耐性の暗号技術やゼロ知識証明(ZK)を活用する取り組みをサポートする。資金と優秀なブレーンの連携が揃えば、高インパクトなオープンソースコードが生まれるのは当然といえる。財団が公式チャネルでプロジェクトを紹介し、コミュニティ全体に認知を広げることで、ZKnoxは設立直後から注目を集めるに至った。
ZKnoxは「量子コンピュータに負けない暗号」に加え、イーサリアムのEVM(仮想マシン)レベルでの最適化にも着手している。NTT(数論変換)の最適化を行い、Falcon(ファルコン)やDilithium(ディリチウム)といった耐量子署名の検証を効率化し、大幅なガス削減効果を狙っている。特に、ZKnoxはNTTの最適化をYul(ユル)で実装し、ファルコンの署名検証コストを24Mガスから2Mガスへと削減することに成功した。これにより、ポスト量子暗号の処理が現実的なコストで実行可能になる。ゼロ知識証明技術をベースとする最適化がレイヤー2のZKロールアップやSTARK(スターク)系スケーリングにも好影響を与える可能性は大きく、量子耐性とスケーリングの双方を視野に入れている点が特徴である。
財団がZKnoxを支援する背景には、量子コンピュータが現行の暗号技術を突き崩すシナリオを危惧している事情がある。ビットコインを含む主要チェーンも無視できない課題であり、業界全体がポスト量子暗号への移行を検討せざるを得ない状況が到来している。Quantum Resistant Ledger(QRL)は耐量子設計のブロックチェーンとして独自の道を歩んでいるが、イーサリアムは既存のエコシステムを量子耐性化するという異なるアプローチを取っている。もし量子耐性が当たり前のトレンドとなれば、適切な実装を行わなかったチェーンは安全性に疑問符を付されるおそれがある。
暗号業界の研究者たちは、ポスト量子暗号への迅速な取り組みがブロックチェーンを量子時代に適合させる鍵だと指摘する。イーサリアムがZKnoxを通じて量子耐性の道筋を示すことは、コミュニティや投資家にとっても安心材料となる。今後5年から10年のうちに量子計算機が暗号資産(仮想通貨)を一斉に突破する可能性が否定できない以上、先行者がアドバンテージを得るのは自然の流れである。ZKnoxの研究と財団の支援は、未来にわたってブロックチェーンを安全かつ持続可能な基盤とするための時機を得た英断だ。
「量子の波が押し寄せる前に動いた者が勝者となる」
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