違法な暗号資産取引額、前年比145%増の約24兆円──過去最高を記録

伊藤 将史
12 Min Read
Highlights
  • 2025年の違法な暗号資産取引が前年比145%増の約24兆円で過去最高を記録
  • ロシアの制裁回避ネットワークA7関連だけで約17兆円、北朝鮮ハッキングも活発化
  • AI詐欺は前年比500%急増、中国語圏マネーロンダリングネットワークが15兆円規模に拡大

ブロックチェーン分析企業のTRMラボは28日、2025年における違法な暗号資産(仮想通貨)取引総額が前年比約145%増の1,580億ドル(約24兆1,993億円)に達し、過去最高を記録したとする年次レポート「2026 Crypto Crime Report」を公開した。

ロシアが「制裁回避手段」として暗号資産を活用

レポートによると、2025年の違法取引額急増の主要因のひとつは、ロシアによるウクライナ侵攻後の国際的な制裁措置を背景とした、同国による制裁回避目的の暗号資産ネットワーク活用が進んだことだとされる。

特にルーブルにペッグされたステーブルコイン「A7A5a7a5a7a5」は単体で720億ドル(約11兆275億円)もの取引を処理しており、クレムリンが支援する制裁回避ネットワーク「A7」に関連するウォレット群も少なくとも390億ドル(約5兆9,732億円)の活動を記録した。

TRMラボはこれらを、単なる個別の回避行動ではなく、国家が支援する「影の経済」を支えるための「耐久性のある金融インフラ」として暗号資産が定着したものと分析している。

また、イランやベネズエラも、伝統的な銀行システムへのアクセスが制限される中で、暗号資産を国家規模で活用している。特にベネズエラでは、決済や送金の「圧力逃し弁」として機能している実態が明らかになった。

犯罪の質的な変化として、ハッキング被害額は28.7億ドル(約4,395億円)に達した。特筆すべきは、2025年2月に発生したBybit(バイビット)への不正侵入一件だけで14.6億ドル(約2,236億円)と、年間の盗難総額の51%を占めている点だ。

攻撃の手口は「スマートコントラクトのコードの脆弱性」を突くものから、秘密鍵やウォレット管理システムといった「運用インフラ」そのものを奪取する形へと明確にシフトしている。

TRMラボは、北朝鮮関連のハッカー集団による攻撃が確認されており、奪われた資金の洗浄には中国語圏の専門的なマネーロンダリングネットワークが介在していると指摘した。こうしたネットワーク全体の取引規模は、2025年に1,030億ドル(約15兆7,755億円)を超えている。

また、投資詐欺の分野では、長期的な信頼関係を築いてから大金を騙し取る「ピッグ・ブッチャリング」詐欺や、生成AIを悪用したなりすまし広告などが横行しており、AI関連の詐欺活動は前年比で約500%急増した。

麻薬取引においても、ロシア語圏のダークネット市場が市場全体の90%以上を占め、公共の場所に商品を隠して購入者に位置情報を送る「デッド・ドロップ」方式が一部の欧米市場でも確認された。

レポートは、法執行機関がリアルタイムの不正暗号資産追跡システムBeacon Network(ビーコン・ネットワーク)などを活用して検知精度を高めているものの、暗号資産が日常的な経済活動に深く埋め込まれたことで、犯罪者側もより巧妙に規制の網を潜り抜けていると結論づけている。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.16円)

関連銘柄:a7a5a7a5

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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