タイ最高裁の判例研究センターは28日付の判例紹介で、被害者がビットコイン
BTCに換えて犯人グループに送った金銭を財物と認め、財物に関する罪の要件を満たすとした全体会議の判決(4929/2569、2569はタイ仏暦で2026年)の要旨を公表した。被害者は5万ドル(約791万円)をビットコインに換えて送金していた。判例紹介は、送った暗号資産(仮想通貨)が電子的なシステムやネットワーク上に形を持ち、価格があり取得し得るものだったと説明している。
タイ最高裁、ビットコインに換えて送った金銭を財物と判断
事件は、サムイ島の検察当局が被告人の男を起訴したもの。判決の日付は判例紹介に書かれていない。
判例紹介は、タイの2018年のデジタル資産事業に関する緊急勅令の定義を引いている。暗号資産は、商品やサービスその他の権利を得るための交換手段、またはデジタル資産どうしの交換に使うことを目的に、電子的なシステムやネットワーク上でつくられた電子データの単位だという。
タイ中央銀行の書簡にも触れた。書簡は、暗号資産はまだ法律上の債務の支払いに使えるお金とはされず、取引する人はだまされたり取引で問題が起きたりしても、金融サービスの利用者としての基本的な保護を受けられない場合があるとしている。
書簡は一方で、暗号資産の価格は変動が大きく、売買する人の需要で動き、その一部は投機によるとも記す。
判例紹介にはさらに、一般的な実務ではビットコインやデジタル通貨(暗号資産)は市場での価値を持つ交換手段で、買い手がいれば現金に換えられ、一般の人もビットコインを保有できるとの記載がある。
そのうえで判例紹介は、被害者が5万ドルをビットコインに換えて送ったこの行為で失ったものは、電子的なシステムやネットワーク上に形がある暗号資産だったと指摘した。形があるため、送った金額を下回らない価格があって取得し得るもので、価値や形がないものとはいえず、送られた金銭は財物に当たるとしている。
判例紹介が挙げた条文は、タイの民商法典137条と、タイ刑法309条2項、340条1項、340条の3だ。タイの法律情報サイトLegardyに掲載された条文によると、民商法典137条は財物を形のある物と定めている。
タイの報道機関Thaigerは28日、この判例紹介を掲載して判決を報じた。
日本では2015年、東京地裁がビットコインを所有権の対象外と判断
日本の民法85条は、民法上の「物」を有体物に限る。現行の資金決済法は2条14項で、暗号資産を、不特定の者への代価の支払いに使え、不特定の者と売買できる財産的価値(電子的に記録されたもの)で、電子情報処理組織を用いて移転できるものなどと定めている。
東京地裁は2015年8月5日、Mt.Gox(マウントゴックス)の破産をめぐり、利用者が同社の破産管財人に約458.88 BTCの引き渡しなどを求めた請求を退けた。ビットコインには空間の一部を占める有体性がなく、排他的に支配できるともいえないため、所有権の対象にならないと判断した。
同地裁は、送金には当事者以外のネットワーク参加者の関与が必要で、アドレスの残高に当たるビットコインそのものの電子記録もないことを、排他的な支配を否定する理由に挙げている。
東京地裁の判決は、破産手続きでの引き渡しなどの請求をめぐる民事の判断で、物権である所有権の対象になるかを扱ったものだ。タイの判決は刑事事件での判断になる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.21円)
