NFTプラットフォーム「メーカーズプレイス」、市場低迷で運営終了を発表

木本 隆義
12 Min Read
画像はMakersplace公式サイトより引用

NFT市場に迫る再編の足音

NFTプラットフォーム「MakersPlace(メーカーズプレイス)」は17日、運営終了を発表した。これに伴い、即時にミンティング(NFTの新規作成)、トークンのインポート、新規アカウントの作成が停止された。既存の作品購入は引き続き可能だが、新たな展示会やイベントは実施されないとのこと。安全な運営終了に向け、利用者にはNFTを自身のウォレットへ移行するよう求めている。

近年「次世代のアート市場の革命」ともてはやされたNFT市場であるが、その熱狂は早くも冷え込みを見せている。2021年頃には市場全体で投資マネーが集中し、一部のプラットフォームでは巨額の資金調達が可能な状況であった。しかし、バブルがはじけるとNFT市場全体の流動性は急速に萎縮し、結果として追加投資がままならなくなる事態が相次いでいる。2021年に約3,000万ドル(当時のレートで約32億円)のシリーズAラウンド資金調達を成功させたメーカーズプレイスもまた、この悪化した投資環境下では資金確保が難しくなったのが実情だ。

メーカーズプレイスは、アーティストとのコラボレーションを通じて新しい市場を切り拓こうとしてきた。デジタルアートを普及させるという高い志は評価に値するが、市場全体の売り上げ低迷と投資家側の財布の紐が固くなる事態に直面している。同社は未使用資金を投資家へ返還する方針を打ち出すなど、責任ある撤退の姿勢を示している点は誠実さを感じさせる。市場環境が悪化する中、プラットフォームにとってはやむを得ない決断であろう。

一方、最大の懸念はアーティストとコレクターへの影響だ。メーカーズプレイスが管理していたNFT作品は、利用者自身のウォレットへ移行する必要があるため、利用者にとっては相当な作業負担となるだろう。現在は手動での移行が可能で、2月には専用の移行ツールが提供される予定だ。移行の締切は6月とされているが、必要に応じて延長の可能性も示唆されている。

しかしながら、プラットフォーム特有の機能やコミュニティは失われる見通しである。これまで築いてきたアーティストとファン、あるいはコレクター間のネットワークをどのように維持・移転するかが今後の課題となるだろう。

NFT市場には、単なる投機対象を超えたユースケースが期待されている。たとえば、音楽の権利管理やデジタルアートの所有証明、さらにはチケットシステムへの応用など、多様な活用が見込まれるからだ。メーカーズプレイスの撤退は市場全体にとって痛手ではあるが、NFTが「詐欺」や「オワコン」に帰結するとは限らない。ブームと沈静化を経て、真に有用なプラットフォームや技術が生き残るというプロセスは、テクノロジーセクターにおいて繰り返し目撃されてきた現象だ。

加熱したバブルが収束し、再編期を迎えたNFT市場であるが、すべてが終わったわけではない。大切なのは、技術の持つ本質的な可能性をいかに現実のビジネスやコミュニティに結びつけるかであろう。投機に翻弄されず、真に価値を創出する事業者こそが次のステージで喝采を浴びることになる。

関連:「NFTビジネス活用事例100連発!」発売|NFT事業の虎の巻に最適
関連:NFT担保融資の市場規模が10億ドルに|NFTによる資産形成を支援
関連:青楓館高等学院、NFTバッジ勲章制度を導入|ゲーミフィケーション

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

Share This Article
Follow:
フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
Leave a Comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA