HIVE、AI市場進出に向け3,000万ドル投資
カナダの「HIVE Digital Technologies(ハイブ・デジタル・テクノロジー)」は23日、「NVIDIA(エヌビディア)」の最新GPUクラスタをケベック州に導入するため、3,000万ドルを投じると発表した。従来のマイニング事業に加え、AIや高性能コンピューティング(HPC)への対応を強化し、収益の多角化と拡大を図る。
ハイブはこのGPUクラスタを用いて、AIモデルのトレーニングやクラウドサービスを提供し、急速に拡大する世界的需要を取り込む計画だ。同社は最新のNVIDIA H100クラスタで年間収益ランレート1,500万ドル、H200クラスタで2,000万ドル超を見込んでおり、HPCサービス全体の収益が大幅に拡大すると予測している。
さらに、ハイブは2025年までに年間収益1億ドルを目指しており、これはHPCサービスだけでなくビットコインマイニング事業を含む全体の収益目標だ。同社は持続可能な再生可能エネルギーを活用し、「ブロックチェーン」と「AI」インフラの拡大を進める中で、高収益性が期待されるHPC分野への投資を加速している。
AIとHPCへの本格シフト
ハイブは、主力事業であるビットコインマイニングだけでなく、最新のGPUクラスタを企業向けに貸し出すビジネスモデルを強化しようと目論む。これにより、AIモデルのトレーニングやリアルタイム分析など、GPU需要が高まる分野を積極的に取り込む考えだ。
業界最大手の「OpenAI(オープンAI)」をはじめ、AI関連企業の収益が急増していることは公然の事実であり、ハイブもそのトレンドに乗ることでより高い収益を期待しているようだ。
ケベック州の再生可能エネルギーを活用
最新GPUが導入されるケベック州は、水力発電をはじめとする豊富な再生可能エネルギー資源を活用できる地理的特長を持つ。この地域のグリーンエネルギーを活用することで、電力コストを抑えるとともに、環境配慮を重視するESG志向の投資家にもアピールできる。
ハイブのデータセンターは、100%再生可能エネルギーによって運用されており、環境負荷を最小限に抑えた持続可能なビジネスモデルを実現している。このような取り組みは、電気代高騰や環境負荷が課題とされる暗号資産(仮想通貨)マイニング業界の中で重要な差別化要素となっている。
環境保護と収益拡大を両立させるには、GPUクラスタ導入に伴う3,000万ドルという多額の投資をどれだけ早く回収できるかが最大の課題となる。ハイブが試算する収益目標に基づけば、2025年第2四半期までには収益構造を安定させる計画だが、その実現性は市場の動向や運営の効率に左右される。
多角化戦略のリスクと展望
AI市場は急拡大しているが、いわゆる「AIバブル」がいつまで続くかは未知数である。また、GPU価格や供給状況、電力料金、さらには規制強化などの外的要因もハイブの業績を大きく左右するだろう。ただし、仮想通貨マイニングというボラティリティの高いマーケットで生き抜いてきたハイブは、変動リスクへの対応力があると見る向きも多い。
同社がねらう「ビットコイン」と「AI」の王手飛車取り戦略は、大きなリターンをもたらす可能性がある一方で、ヘッジが効きにくく、市場環境の変化に対して同一方向にブレが増幅される危険性をはらむ。だが、仮想通貨マイニングで得た運営ノウハウをAI分野へ転用することができれば、競合他社に対して圧倒的な優位性を得るだろう。
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