92,000ドルが仮想通貨市場回復の分岐点
オンチェーン分析プラットフォーム「Glassnode(グラスノード)」は5日、週刊のオンチェーンニュースレターを更新。「Violent Volatility(激しいボラティリティ)」と題された今回の投稿では、オンチェーンデータを活用して直近の暗号資産(仮想通貨)市場が経験した大幅な価格変動を深く分析している。
URPDから見える空白の価格帯
オンチェーンボリュームを可視化する「URPD(UTXO Realized Price Distribution)」の分析では、今回の下落で到達した86,000ドル付近の価格帯は取引量が少なく、流動性が低い「エアギャップ」として機能する可能性があることが示された。
過去の取引履歴が少ない価格帯では、市場の需給バランスが未確立のため、価格が急激に変動しやすい傾向がある。今回の下落局面では、このエアギャップに市場が突入し、大きな価格変動が発生した。
なお、86,000ドル以下の価格帯では2月26日から3月3日にかけて、流通供給量の0.76%に相当する150,000 BTCが取得されているという。この新たな取得ゾーンが、今後の市場のサポートとして機能するかが注目される。

ウォレットへの売り圧力と損失額の増加
グラスノードは過去2カ月間にわたり、大小問わずさまざまなウォレットサイズで均一に売り圧力がかかっていることも強調。この売り圧力は1月中旬以降から特に強まっており、その多くが損失を確定する売りであったとされている。

市場の損失額も急増している。3月初週の実現損失は1日あたり8億1,800万ドルを記録。これは、2024年8月5日に発生した円キャリートレード解消時の1日13億4,000万ドルに次ぐ規模の損失確定となっている。このように、多くの投資家が市場の下落圧力に耐えきれず撤退していることがデータからも示されている。

SOPRが示す過去データからの反転の兆し
市場参加者の利益・損失確定の状況を示す「SOPR(Spent Output Profit Ratio)」は、2024年10月以来初めて1.0を下回った。これは市場センチメントの悪化を示唆しており、市場参加者が平均して損失を確定させていることを意味する。

しかしグラスノードは過去のデータからも、SOPRが1.0に近づくと強い買いが入る傾向があり、価格の底打ちや反発の兆候となることが多い点を指摘。もし今後SOPRが1.0から反発して上昇していく場合、市場回復につながる可能性があると分析している。
短期保有者コストベースから見る今後の価格シナリオ
グラスノードは、短期保有者の取引動向から今後の価格シナリオを共有。短期保有の投資家がどの価格帯でコインを取得しているかを示す「短期保有者コストベース」は、現時点において以下の水準で推移しているという。
- 短期保有者コストベース +1σ:130,000ドル
- 短期保有者コストベース(中央値):92,000ドル
- 短期保有者コストベース -1σ:71,000ドル

現在の市場価格は92,000ドルの短期保有者コストベースを下回り、71,000ドル(-1σ)との間で推移している。グラスノードは今後のシナリオとして、92,000ドルを回復できれば、投資家心理の改善とともに強気相場の継続が期待できると強調。一方で、71,000ドルまで下落した場合、売り圧力がさらに強まり、市場は再度調整局面に入る可能性がある点を示唆した。
グラスノードが共有したオンチェーンデータの分析では、現在の市場センチメントが悪化していることは明らかだ。だが、SOPRの動向や短期保有者コストベースの推移を考慮すると、今後市場の回復シグナルも見えてくる可能性もあるだろう。仮想通貨市場が再び価格を上昇させていけるのか、今後の市場動向に注視していきたい。
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