米司法省のバージニア州東部地区連邦検事局は5日(米国時間)、元米連邦捜査局(FBI)捜査官のパトリック・スティーブン・ヤロック被告(37)が、通信詐欺とマネーロンダリングの罪を認めたと発表した。FBIが捜査で集めた暗号資産(仮想通貨)の認証情報を使った不正送金は約100回、得た額は約247万ドル(約3億9,063万円)にのぼる。
元FBI捜査官、防諜部門で認証情報にアクセス
同局によると、ヤロック被告は2017年〜2025年初め、FBIボストン支局で敵対国家を対象とする捜査班に所属。2025年2月〜2026年7月31日は防諜・スパイ対策の部門で、捜査で集めた暗号資産の認証情報が入ったFBIのシステムにアクセスできる立場にあった。
窃取の始まりは遅くとも2024年12月で、ボストン支局にいた時期にあたる。盗んだ先は、ほかの捜査の対象者や敵対国家側が管理するウォレットと、FBIが作戦用に作ったウォレット少なくとも1つ。使われた認証情報は35件の捜査に及ぶ。
盗んだ暗号資産は別の暗号資産に換えたうえで、さらに取引を重ねて出どころを分かりにくくしていた。2025年11月25日〜2026年1月13日には約9万3,082ドル(約1,469万円)を自分の口座に移し、ほかの口座を経てクレジットカードや自動車ローンなどの支払いに回している。
合意した事実の陳述書によると、同被告の行為は犯罪組織と敵対国家に関する複数の捜査を損ない、FBIの情報源と捜査手法も危険にさらしたという。
自ら打ち明け、当初は100万ドル前後と説明
8月1日に裁判所へ提出された宣誓供述書によると、同被告は7月28日、以前一緒に働いた司法省の職員に連絡し、翌29日に面会して窃取を打ち明けた。FBIは29日に同被告を休職とし、31日付で解雇。同日午後には自宅で逮捕している。
供述書に記された職員の説明によれば、同被告が伝えたのは、送金は10〜12回、額は100万ドル(約1億5,787万円)未満という内容だ。29日にはFBI本部にも申し出ており、送金は約10回、ウォレットの価値は約100万ドルと説明。
FBIは同被告の管理するウォレットなどから、約92万5,426ドル(約1億4,610万円)相当の暗号資産を米政府が管理するウォレットに移した。これに対し今回の発表は、送金を約100回、不正収益を約247万ドルとしている。
| 時点 | 内容 | 送金の回数 | 額 |
|---|---|---|---|
| 7月29日 | 司法省の職員への説明 | 10〜12回 | 100万ドル未満 |
| 7月29日 | FBI本部への説明 | 約10回 | 約100万ドル(ウォレットの価値) |
| 7月31日 | FBIが政府のウォレットへ移した額 | — | 約92万5,426ドル |
| 11月5日 | 司法省の発表(不正収益) | 約100回 | 約247万ドル |
ChatGPTに移住先を相談、判決は2027年3月
同局によると、同被告は不正収益を借金の返済のほか、海外での新しい生活の資金にも充てる考えだったという。対話型AIのChatGPTには、投資の利益を最大にする方法と、欧州連合(EU)のどこに住むかを尋ねている。
ChatGPTがポルトガルでのブドウ園の購入を提案したのを受け、6月15日に現地の弁護士へ委任状を渡し、ポルトガルの税関・税務当局での代理や納税者番号の取得を任せた。
9月にはポルトガルへの渡航も手配済みだった。
米連邦の捜査官が捜査中に暗号資産を盗んだ事件は過去にもある。2015年には、闇サイトのシルクロードの捜査班にいた元シークレットサービス捜査官が、約2万ビットコイン(BTC)
BTC(当時約35万ドル)を自分のウォレットに移したと認め、マネーロンダリングなどの罪で禁錮71カ月の判決を受けた。
ヤロック被告の判決の言い渡しは2027年3月4日の予定だ。法定刑の上限は禁錮20年で、量刑は連邦地裁の判事が量刑ガイドラインなどを考慮して決める。
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