BTC、実現時価総額が過去最高を更新|9,348億ドルに到達
暗号資産(仮想通貨)オンチェーン分析ツールCryptoQuant(クリプトクオント)認定オンチェーンアナリストのCarmelo Alemán(カーメロ・アレマン)氏は8日、ビットコインの実現時価総額が9,348億8,000万ドルに達し、複数の仮想通貨市場の健全性を示す指標が強気のシグナルを発していると報告した。
これは、最近の市場が経験した神経質な展開とは裏腹なものだ。トランプ大統領とイーロン・マスク氏がメディア上で繰り広げた舌戦と奇妙に歩調を合わせるかのように、ビットコイン価格は唐突な調整に見舞われた。この出来事は、投資家やアナリストの間に「今度こそ、この強気サイクルは終わったのではないか」というもっともな懸念を植え付けた。だが、アレマン氏が提示するブロックチェーン上の生データ、いわゆる『オンチェーン指標』を分析すると、そうした疑念はたちまち霧散してしまうという。
まず注目すべきは、取引所に保管されているビットコインの量だ。中央集権型取引所(CEX)に存在するビットコインの保有高は、この1週間で243万5,613 BTCから236万5,410 BTCへと、実に2.88%も減少した。これは、市場にとってはきわめて強気な材料である。なぜなら、取引所からビットコインが引き出されているということは、差し迫った売り圧力が低下していることを意味するからだ。そして、それは投資家による強固な信頼感と、単なる投機対象ではなく『価値保蔵手段』としてのビットコインに対する深い確信を反映しているといえよう。
そして、今回のニュースの核心である『実現時価総額』は、驚くべきことに過去最高を更新し続けている。8日時点で、その額は9,348億8,000万ドルという新たな高みに達した。実現時価総額とは、各ビットコインが最後に取引された時の価格で評価した時価総額であり、投機的な価格変動を除いた、より実態に近い市場の資本規模を示す指標である。この指標が上昇しているということは、ビットコインが着実に買われ、市場への資本流入が増加していることの何よりの証左であり、長期的な信頼感を裏付けている。
取引所からの資金の流れを示す『ネットフロー』も、この見方を補強する。データによれば、取引所への預け入れよりも引き出しが常に上回る「純流出」の状態が続いている。これは先の保有高減少の背景にある動きであり、投資家がビットコインを積極的に手元に集め、長期保有する『アキュムレーション(蓄積)』の段階にあることを強く示唆する。
加えて、保有されているビットコインの量や期間を示す『UTXOバリューバンド』も興味深い傾向をしめしている。様々な保有量や年数の階層で、ビットコインの量が増加し続けているのだ。これは、一部の大口投資家だけでなく、多種多様な投資家層にわたって健全な資産分散が進んでいることを物語る。そして、それは投資家の信頼感が持続的に高まり、安易に売却しようとする動きが減っていることの裏返しに他ならない。
重要なのは、「これらの傾向は決して孤立した事象ではない」という点である。取引所の保有高減少、実現時価総額の更新、純流出の継続、そして健全な保有分布。これらすべてが一点を指し示している。すなわち、市場参加者の行動に構造的なシフトが起きているということである。短期的な値動きに一喜一憂する投機的な動きは影を潜め、長期的な確信に基づいた保有が主流となりつつある。
アレマン氏は自身の分析を「ビットコインは上昇を続けるしかない」という、実に挑発的な一言で締めくくっている。市場の表面的な価格変動の裏側で、データは着々と、そして力強く、次の飛躍に向けた土台が固められていることを物語っているようだ。今後の市場が、この静かなる予言をどう証明していくのか、注意深く見守る必要がありそうだ。
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