非課税措置と企業誘致で海外参入を狙う
ベラルーシのルカシェンコ大統領は4日、暗号資産(仮想通貨)マイニングを推奨する意向を示した。
ベラルーシが仮想通貨マイニングを推進する背景には、経済制裁の影響と、原子力発電所の余剰電力がある。国営カリウム肥料生産企業「Belaruskali(ベラルーシカリ)」は、世界最大級のカリ肥料メーカーで、2019年時点で世界供給量の20%を占めていた。しかし、2021年に米国政府の制裁対象となり、国内の主要輸出産業が打撃を受けた。こうした状況の中、ルカシェンコ政権は2018年の大統領令で「2025年末まで非課税」とするほど大胆な税制優遇を掲げ、海外のマイニング企業やIT人材の誘致を図っている。ただし「欧州最後の独裁国家」というイメージと制裁下の環境が、大手企業の参入を慎重にさせる要因になっている。
仮想通貨を国家の資産として保有する動きが世界的に広がる中、ベラルーシもマイニングの推進を模索している。エルサルバドルやブータンの事例を追随する形だが、欧米からは「制裁逃れ」の懸念を向けられている。ハッシュレートのシェアが小さい現状でも、大規模投資によって影響力を拡大すれば、市場へ無視できないインパクトを及ぼす可能性はある。
ベラルーシが打ち出したマイニング奨励策は、雇用創出と外貨獲得を狙う瀬戸際の選択肢といえる。失敗すれば笑い者だが、成功すれば国全体がビットコインで潤うシナリオもある。政策面では原子力発電所の余剰電力を安価で提供し、ハイテク・パーク(HTP)経由の企業誘致などインフラを整備している一方、政治リスクや制裁による機材不足など課題は残る。マイニングには環境負荷の問題もあるが、現時点では政府の発言から経済的側面を重視していることがうかがえる。
国際社会では、EUや米国が仮想通貨を制裁対象に含めるなど厳しい視線を向けている。ベラルーシはロシアと足並みをそろえ、西側の金融システムとは異なる経済戦略を模索している。一方、仮想通貨を国家戦略に組み込む試みは「金融実験」としても注目される。ベラルーシの成否は、エルサルバドルなど「仮想通貨導入国家」の動向とともに、市場と各国政府から引き続き注目を集めそうだ。
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