香港証券取引所上場のYunfeng Financial Group Limited(ユンフェン・フィナンシャル・グループ、雲鋒金融集團有限公司、証券コード:376)は2日、戦略的準備資産として1万ETH(イーサリアム)を4,400万米ドル(約65億円)で取得したと発表した。同社はアリババ創業者ジャック・マー(馬雲)氏が2010年に共同創設したYunfeng Capital(ユンフェン・キャピタル)の傘下企業で、Web3やRWA(実世界資産)分野への事業拡大戦略の一環としてETH保有に踏み切った。
アジア金融機関によるWeb3戦略の本格展開
今回の大規模ETH取得により、ユンフェン・フィナンシャルはストラテジー(旧マイクロストラテジー)やテスラなどが先駆けとなった暗号資産を企業財務に活用する戦略を採用する上場企業のトレンドに参入。アジア地域における機関投資家の暗号資産投資が本格化していることを示す象徴的な事例となった。
購入資金は全て内部キャッシュリザーブから拠出され、外部からの新規資金調達は実施していない。取得したETHは連結財務諸表上で投資として計上される。
RWAトークン化の重要インフラとして位置づけ
同社取締役会は、ETH保有について「実世界資産(RWA)のトークン化活動に重要なインフラサポートを提供し、Web3分野における技術イノベーションを促進する」と説明。金融とテクノロジーの包括的統合により、「顧客のサービス体験と金融自律性を効果的に向上させる」方針を示した。
具体的には、保険事業におけるETHの活用モデル開発やWeb3に適合する革新的ビジネスシナリオの探索を進める計画。伝統的通貨への依存度を下げ、資産ポートフォリオの最適化も狙う。
ジャック・マー系企業のフロンティア戦略
今回のETH投資は、7月14日に発表されたWeb3、RWA、デジタル通貨、ESGネットゼロ資産、AIといったフロンティア領域への戦略的拡大計画の具体的実行として位置づけられる。
ユンフェン・フィナンシャルは、ジャック・マー氏とデビッド・ユー氏が2010年に共同創設したプライベートエクイティファーム「ユンフェン・キャピタル」が2015年に買収した香港上場の金融サービス企業。現在もユンフォン・キャピタルが実質的な親会社として機能している。
リスク管理と今後の展開
同社は「暗号資産市場は極めて変動性が高く、ETH価格はマクロ経済や規制変更などの要因により大幅に変動する可能性がある」として、株主および投資家に対し適切な注意喚起を実施。今後も市場動向、規制環境、財務状況を継続監視しながら、必要に応じて準備資産の規模を調整する方針だ。
中国テック業界の象徴的人物であるジャック・マー氏の関連企業による大規模ETH投資は、グローバルな機関投資家の暗号資産採用加速と、アジア金融市場におけるWeb3戦略の本格化を示す重要な指標として業界関係者から注目を集めている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.853円)