裁判所承認を受け、債権者集会で補償計画を議論へ
インドの暗号資産(仮想通貨)取引所「WazirX(ワジールエックス)」は23日、昨年発生した大規模ハッキング事件で盗まれた顧客資産を補償する計画について、親会社である「Zettai(ゼッタイ、本社:シンガポール)」がシンガポール高等裁判所から許可を得たと発表した。
ワジールエックスは2024年7月18日に大規模なハッキング被害を受け、約2億3,500万ドル(約366億円)相当の仮想通貨が不正に引き出された。その後、親会社であるゼッタイはプラットフォームの再構築を目指し、法的保護の下で計画を進めるための許可をシンガポールの裁判所に申請。裁判所は16週間の猶予期間を付与し、再建プロセスを支援する方針を示した。
再構築計画の柱
ゼッタイは、今回の判決を受け、包括的な再構築計画を進める意思を改めて表明している。この計画の主な要点は以下のとおりである。
- 債務再編フレームワーク
ワジールエックスに関連する債務を再編成し、全ユーザーの利益を最大化する構造を構築する。 - トークンの配布
プラットフォームの流動資産を、制度発効日から10営業日以内にトークンで配布する。 - リカバリートークンの導入
被害回復を目的としたリカバリートークン(RT)の発行と、RT購入メカニズムの実装を進める。 - プラットフォームの再活性化
新機能の導入と分散型取引所(DEX)の立ち上げにより、ワジールエックスを戦略的に再活性化する。 - 利益分配構造
再構築後の36カ月間の純利益をRT購入資金として活用する。
ワジールエックスの創設者であるニシャル・シェッティ氏は、「裁判所がこの制度に関する会議を開催する許可を与え、私たちの努力を認めてくれたことに感謝する。できるだけ早く利用者に回復を促し、この制度に賛成票を投じてもらえるよう全力を尽くす」とコメントしている。
今後のプロセス
ゼッタイは債権者集会をオンライン形式で開催する予定で、提案された和解案への電子投票を実施する計画だ。詳細については近日中に通知するとしており、透明性と公平性の維持を引き続き重視するとしている。
ワジールエックスの大規模なハッキング被害は、仮想通貨取引所の脆弱性を浮き彫りにした。親会社であるゼッタイの補償計画は信頼回復の試みだが、その成功には透明性と実効性が求められる。被害者の救済と信頼の再構築が実現するか、今後の進展が注目される。
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