コミュニティの批判に反論|分散型ステーキング助成金構想も明らかに
イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が27日、イーサリアム財団(EF)がイーサリアム(ETH)をステーキングせずに売却する理由を自身のXで説明した。この発言は、EFが最近35,000 ETH(約132.3億円相当)を暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken(クラーケン)」に移転したことに対するコミュニティからの批判を受けてのものだ。
Jason氏
なぜイーサリアム財団は、ノーベル賞財団のように、保有するETHをすべてステーキングして、その収益で運営費用を賄わないのか?なぜ市場のセンチメントや皆の声を考慮せず、定期的にETHを売却することにこだわるのか?あなたはいつも…
ヴィテリック・ブテリン氏
イーサリアム財団は、論争を呼ぶハードフォークが発生した場合に「公式な選択」を強いられる状況を回避したいと考えている。
これに対する興味深い解決案として、「倫理的である限り、自由な方法でETHをステーキングし、その利益を得られる」という形式の助成金提供を検討中だ。
ブテリン氏は「財団がETHをステーキングしない理由の一つは、意見が分かれるハードフォークが発生した場合に『公式な立場』を取ることを迫られる状況を避けたいからだ」と述べた。つまり、財団がETHをステーキングすることで、特定の派閥に賛同または反対する立場を取ることになり、重要な決定におけるコミュニティの視点が歪められる可能性があるという懸念を示した。
同氏は、財団はステーキングに関与するための代替方法を検討しており、以下の2つの方法を提案している。
- 助成金としてステーキングされたETHの発行:これにより、助成金受領者はETHをステーキングし、報酬の引き出しのタイミングを制御できるようになる。
- 複数の組織にステーキング責任の委任:財団に代わってステーキングを行う。
ブテリン氏は、「当財団のETHをステーキングして構わない。倫理的に問題ない限り、どのようにステーキングするかはあなた次第だ。そして、利益はあなたのものだ」という形式で助成金を提供するアイデアも検討中だと述べた。この提案は、分散型ステーキング助成金構想と呼ばれ、イーサリアムネットワークの分散化を促進する狙いがある。
コミュニティでは、イーサリアム財団がETHをステーキングすることで、ステーキング報酬を通じて運営資金を調達し、資産売却の必要性を減らすことができると主張する声も多い。
ブロックチェーン分析プラットフォーム「ScopeScan(スコープスキャン)」の報告によると、財団は今年、分散型取引所「CoWSwap(コウスワップ)」を通じて4,066 ETH(約17.2億円相当)をオンチェーンで売却した。スコープスキャンは、現在の年間ステーキング利回りが3.1%であることを考慮すると、財団が保有する271,000 ETH(約1,030億円相当)をステーキングした場合、年間8,400 ETH(約31.8億円相当)の報酬が得られると試算している。この額は、オンチェーンでの売却額をはるかに上回るため、「なぜ、ステーキングしないのか?」と疑問を投げかけている。
イーサリアム財団のアドレスを確認したところ、現在271,000 ETH(約1,030億円相当)を保有している。
現在の3.1%のステーキングAPR(年率)で計算すると、これらの資産から年間8,400 ETH(約31.8億円相当)の収入が得られる可能性がある。これはオンチェーンで直接売却した額を上回る。
では、なぜステーキングしないのか?
一方、EFのETH売却は今回が初めてではない。仮想通貨ニュースメディアの「Coingape(コインゲイプ)」によると、2021年1月1日以降、239,000 ETHを売却している。これらの売却は、イーサリアムエコシステムの開発支援や運営費用の調達を目的としているとされる。
しかし、一部の投資家からはEFの支出の不透明性や、イーサリアムの技術革新の遅れを指摘する声も上がっている。
ブテリン氏は、仮想通貨コミュニティに対し、イーサリアム財団のより広範な貢献を認識するよう促し、ETH売却益は、主要なネットワークアップグレードを担当する開発者や研究者への支払いに当てられると述べた。
具体的には、以下のような開発や研究に資金が充てられている。
- イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake)への移行
- 一貫して低い取引手数料の維持
- 平均約30秒という高速処理の維持
- プライバシー強化のためのゼロ知識技術
- セキュリティ向上のためのアカウント抽象化
- 世界各地のイーサリアムのローカルイベントのスポンサー
ブテリン氏の説明は、イーサリアム財団がETHをステーキングしない理由を明らかにするとともに、財団がイーサリアムのエコシステムに対して多岐にわたる貢献をしていることを強調している。
市場への影響に関しては、イーサリアム価格は現在2,470ドル(約38.2万円)付近で取引されており、3,000ドル(約45.9万円)の重要な心理的レベルまであと約20%の上昇が必要だ。ブテリン氏が提案する分散型ステーキング助成金が実現すれば、イーサリアムの分散化が進み、価格にも好影響を与える可能性がある。
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情報ソース:ヴィタリック・ブテリン氏X / コインゲイプ / スコープスキャンX