オーストリアの首都ウィーンで11月26日、ウクライナ人学生のダニーロ・K氏(21歳)が暗号資産(仮想通貨)ウォレットのパスワードを奪取する目的で拷問され殺害される事件が発生した。オーストリアメディアoe24が3日報じた。ウィーン警察は同日、同国人の学生(19歳)と男(45歳)の2名を逮捕したと発表した。
ホテル地下駐車場で拉致、暗号資産ウォレットを強奪
事件は11月26日午前0時30分頃、ウィーン・ドナウシュタット地区で発見された炎上中の高級車メルセデスから始まった。付近住民が通報し、消防が駆けつけたところ、後部座席から激しく焼損した遺体が発見された。被害者の身元は後にウクライナ・ハリコフ市副市長の息子であるダニーロ・K氏と判明した。
警察の捜査により、犯行はその数時間前、ウィーン中心部のソフィテルホテル「SO/Vienna」の地下駐車場で始まったことが判明している。19歳の学生は被害者の学友で、ホテル地下駐車場で襲撃した。ホテル宿泊客が口論の叫び声を聞いて通報したが、犯人らは被害者を自身の高級車メルセデスに押し込み、ドナウシュタット地区に移動させた。
2つのウォレットから全額引き出し、証拠隠滅
犯人らは被害者を激しく暴行し、2つの暗号資産ウォレットのパスワードを強要した。ウィーン州警察のゲルハルト・ヴィンクラー大佐は記者会見で「被害者は歯を全て折られ、自身の血液で窒息死した。頭部への打撃と最終的には火災により死亡した」と述べた。遺体の80%が焼損していたという。
警察によると、被害者の暗号資産ウォレットから高額が引き出され、ウォレットは完全に空にされた。また、逮捕時に犯人の1人は大量の米ドル現金を所持していた。犯人らは被害者をメルセデスの後部座席に閉じ込め、ガソリンをかけて点火した。現場からは溶けたガソリン缶が発見されている。
ウクライナに逃亡後、国外で逮捕
監視カメラの映像により、犯人らがホテル地下駐車場で襲撃する様子や、22区のガソリンスタンドでガソリン缶を購入する様子が記録されており、これが逮捕の決め手となった。犯人2名は犯行翌朝の午前9時7分にウクライナ国境を越えて逃亡したが、国外で逮捕された。
オーストリア当局は2名を国外で逮捕したが、ウクライナ側の要請により、事件の管轄権はウクライナに移譲される。オーストリア司法当局は犯人を引き渡さず、ウクライナ当局が訴追を行う。
被害者の父親であるハリコフ市のセルゲイ・K副市長は現在ウィーンに滞在し、遺体の身元確認と法的手続きを行っている。ハリコフ市長のイゴール・テレホフ氏は地元メディアに対し「これは個人的な問題であり、人間の悲劇だ」とコメントした。




