ミニアプリ間の送客と集客を支える新機能
TON(トン)ブロックチェーンの日本におけるアクセラレーター「TON Japan(トン・ジャパン)」は16日、次世代のユーザーグロースプラットフォームである「Apps Network(アップ・ネットワーク)」の本格的な展開を開始したと発表した。これは、Web3時代の新たなユーザー獲得と収益化を支援する広告インフラである。
本件の舞台は、全世界で10億人近いユーザーを抱えるメッセージアプリ「Telegram(テレグラム)」。この巨大プラットフォームは2024年、開発者が自由にアプリケーションを提供できる「Telegram Apps Center(テレグラム・アップ・センター)」をリリースした。その結果、テレグラム上で動作するミニアプリ市場は、爆発的な成長を遂げた。
たとえば、ミニアプリゲームの「Hamster Kombat(ハムスター・コンバット)」は、リリースからわずか半年で3億ものユーザーを獲得。「Catizen(キャティゼン)」は同時期に約40億円という売上を叩き出した。
しかし、その華やかな成功の裏側で、開発者たちは根深い課題に直面していた。テレグラム・ミニアプリは、そのプラットフォームの特性上、従来のWeb広告やモバイルアプリ向けの広告を導入することが困難だったのである。これにより、特に課金しない大多数のユーザーから収益を上げる、いわゆるマネタイズがきわめて難しいという問題が生じていた。
そこで登場したのが、トン・ジャパンが満を持して投入したアップ・ネットワークである。このプラットフォームのしくみは、実に明快。開発者は簡単なSDK(ソフトウェア開発キット)を自身のミニアプリに実装するだけで、広告を表示させることが可能となる。これにより、手軽にユーザー数の増加や、これまで収益化が困難であった非課金ユーザー層からの収益確保を実現できるようになった。
さらに、このネットワークはWeb3ユーザーとの親和性が高いという特性を最大限に活用。ミニアプリのユーザー層に対し、直接的かつ効果的なアプローチを行うしくみを備えている。これにより、今後さらなる成長が見込まれるテレグラム・エコシステム内で、効率的なプロモーションとマネタイズを両立させる。
特筆すべきは、「Web3 Traffic Exchange(Web3トラフィック・エクスチェンジ)」と名付けられた独自機能であろう。これは、同SDKを導入したミニアプリ同士が、広告費を一切かけずに相互のユーザーを紹介し、送り合うことができるという画期的なしくみである。参加者同士が互いのユーザーを共有し合うことで、コストをかけずに新たな顧客を獲得する、Web3ならではの協調的な集客手法だ。
アップ・ネットワークは、2024年11月に仮リリースされて以降、静かだが着実にその生態系を拡大してきた。本格ローンチが発表された現在、導入されたミニアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)の合計は、実に1,280万人を突破している。Web3のマスアダプションを現実のものとする可能性に注目したい。
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