英国の金融行動監督機構(FCA)は8日、国内の投資環境を強化し、世界をリードする金融センターとしての地位を維持することを目指した新たな規則案を発表した。今回の規則案は、「個人投資家への情報開示の改善」と「プロの投資家と一般個人の境界線の明確化」という二本柱で構成されている。
EU由来の開示制度を置き換え、企業責任も強化の方向へ
情報開示の改善という点では、従来の複雑で形式的なテンプレートを前提とした仕組みを大幅に見直し。EU由来の開示制度(PRIIPs/UCITS)を廃止し、英国の「消費者保護義務」に基づいて構築された柔軟な制度に置き換えるとしている。これにより、投資の潜在的収益やコスト、リスクなどを顧客にとって理解しやすく示す新たな資料形式を企業に求める形だ。
また、FCAは個人投資家の投資活動を長期的に支えるため、将来の規制のあり方について広く意見を募る文書も公開している。業界や関係者からの意見収集を通じ、投資の心理的なハードルを下げ、必要な範囲での個人投資家のリスク選択を後押しする適切な規制の整備が期待される。
もう一つの柱である「プロの投資家」の定義明確化は、ホールセール(業者間取引)市場の活性化を目的としている。規則案では一定の経験や助言の利用、または高いリスク耐性を持つ者のみをプロと認め、個人向けの広範な保護枠組みから外す考えが示されている。さらに企業には、顧客が本当に基準を満たしているかを適切に判断する責任を負わせ、恣意的な判断が入り込まないような制度を整えるとしている。
対象を絞った支援策に関する詳細な規則は、今後数日以内に公表される予定だ。FCAは業界団体とも連携し、投資の意義を分かりやすく伝える取り組みを支援する姿勢も示している。
FCAの市場担当執行役員であるサイモン・ウォールズ氏は、「この規則案は企業が個人顧客に情報を提供し、関心を持たせる資料を提供できるようにすることを保証する」と声明内で述べた。加えて、契約当事者や情報に基づく同意、そしてそれに見合った規制によって定義されるプロの市場により明確な一線を引くことの重要性を強調している。
FCAによる新たな規則案は、単に既存規則を修正するだけでなく、投資機会への適切な参加を促す方向へ政策の姿勢を転換するものと位置付けられる。英国が競争力ある投資市場を維持できるかは、これらの新たな枠組みがどれだけ実効性を持つかに左右されそうだ。
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