暗号資産(仮想通貨)イーサリアム
ETHの開発を支えるイーサリアム財団の研究者ジャスティン・ドレイク氏は、インドのムンバイで3日に始まった開発者会議Devcon 8(デブコン8)の講演で、量子コンピューターとAIに耐える暗号への移行を2028年12月までに終えたいとの目標を示した。財団のプロトコル部門が9月に公表した計画の完了目標は2029年12月で、それより1年早い。ドレイク氏はこの目標を「hope」(望み)と表現した。
イーサリアムの量子対策、目標は「mission 2028」
ドレイク氏は講演で、新しい目標を「mission 2028」と呼んだ。次の大型アップグレードGlamsterdam(グラムステルダム)を2027年1月にメインネットで実施し、2028年12月までに耐量子・耐AIの移行を終えたいと話した。その後の3回のアップグレードに24か月をあてる形だという。
グラムステルダムは、10月22日の財団の発表で、テストネットHoodiで日本時間10月27日に予定していた実施が延期された。財団のブログでは、日本時間4日11時の時点で新しい日程は示されていない。
財団のブログで、この目標を新しい計画として公表した記事は、日本時間4日11時の時点で見当たらない。
共に登壇したKev氏(動画の説明欄の表記)によると、置き換えの対象はイーサリアムの3つの層だ。取引を処理する実行層、合意を取る合意層、データを扱うデータ層で、量子コンピューターやAIに破られる恐れのある今の暗号を、ハッシュ関数を使う方式に替えていく。
ドレイク氏は、財団のプロトコル部門などが示す叩き台のロードマップStrawmapを大きく改めると講演で発表し、3層の置き換えをJ*と呼ぶアップグレードまでに終えたい考えを示した。数か月前の計画では、その2回後のL*だった。
移行の要になるのは、大きな署名や証明を小さな証明にまとめる部品leanVMだ。ドレイク氏によると、この部品はこの数日で、全体を通した形式検証(数学的に正しさを証明する手法)という節目に達した。
Kev氏は、必要な部品を遅くとも2027年末までに固め、2028年12月までに順にアップグレードへ組み込む考えを示した。
JinaCoinの価格データによると、執筆時点(日本時間4日11時26分)で1ETH=35万7,903円だった。
金融庁の暗号資産交換業者登録一覧(9月30日現在)をJinaCoinが集計したところ、執筆時点でETHを取り扱う業者として記載されているのは27社中22社だ。業者名は国内の暗号資産交換業者一覧で確かめられる。
国内の取扱業者9月30日現在
ETHを取り扱う国内の登録業者
Custodiem、bitFlyer、ビットバンク、GMOコイン、ビットトレード、BTCボックス、SBI VCトレード、FINX JCrypto
ほか14社を見る
コインチェック、楽天ウォレット、S.BLOX、オーケーコイン・ジャパン、OSL Japan、マーキュリー、BACKSEAT暗号資産交換業、HashKey Japan、Crypto Garage、メルコイン、Binance Japan、Laser Digital Japan、Zaif、ガイア
登録一覧の「取り扱う暗号資産」欄にETHの記載がある業者。取引所形式か販売所形式かは区別していません。
イーサリアム財団の9月の計画は2029年12月
財団のプロトコル部門は9月7日に公表した計画で、3層すべての耐量子化を2029年12月までに終える目標を掲げている。量子コンピューターが今の暗号を破る日(Qデー)が早ければ2030年に来ると、意図的に厳しく見積もって備える。計画は、信頼できる見積もりの多くはこれより遅いとしている。
9月の計画は、2029年12月を少なくとも2027年1月までは譲らない期限と位置づけた。2027年1月に、外部の専門家の助言を受けて量子の進歩を見直す予定だ。J*は、Qデーの後も保証を一部落として動き続けるための、最小限の耐量子化の段階と位置づけている。
9月の計画によると、グラムステルダムを2026年12月、L*を2029年12月に実施するには、平均7.2か月ごとにアップグレードを重ねる必要がある。計画自身が、かなり意欲的な日程だとしていた。
| 項目 | 9月7日の財団の計画 | 3日の講演 |
|---|---|---|
| 完了の目標 | 2029年12月 | 2028年12月(望み) |
| 3層の耐量子化を終える段階 | L*(グラムステルダムの5回後)。J*は最小限の耐量子化 | J*(グラムステルダムの3回後) |
| グラムステルダムのメインネット | 2026年12月の実施を前提に試算 | 2027年1月を目指す |
| Qデーの想定 | 計画の前提として早ければ2030年(意図的に厳しめの想定) | ドレイク氏は2032年を想定、2029年までの確率は10% |
イーサリアムの量子対策を急ぐ理由に量子とAI
ドレイク氏は前倒しの理由に、量子計算の研究の進歩に加えてAIを挙げた。AIが新しい数学を生み出し、量子コンピューターを使わずに今の暗号を破る恐れがあるとして、この脅威を大きく過小評価していたと述べた。
同氏はQデーを2032年と想定しつつ、2029年までに来る確率も10%あるとみており、移行を急ぐ理由として十分だと話した。
同氏は10月7日にも、AIによる数学の進歩に備え、資産を新しいアドレスへ計画的に移すバンカーモードを業界に呼びかけていた。
Kev氏は、ETHの総供給の72%が、過去に取引へ署名して公開鍵が見えているアカウントにひも付くと示した。該当するアカウントで不安があれば、新しいアカウントへ移す方法もあるという。署名したことのないアカウントはハッシュしか見えず、攻撃者はまず元の公開鍵を割り出す必要があるためだ。
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