イーサリアム、NFT「CryptoPunks」が美術館超える芸術と評価──公式寄稿

伊藤 将史
13 Min Read
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
Highlights
  • イーサリアム公式が寄稿記事を公開、ブロックチェーンアートがネットワーク稼働中は永続し美術館より長生きする可能性を主張。
  • CryptoPunks開発のLarva Labsを代表例に、ネットワークが表現素材となり合意が価値を創出する新しい芸術形式と評価。
  • MoMAやロサンゼルス美術館がCryptoPunks収集を開始、NFTブーム沈静化の2026年に公式が芸術的価値を再評価。

イーサリアムは26日、『Art That Outlives Museums: When Network Becomes the Medium(美術館を超えて生き続ける芸術:ネットワークが媒体となる時)』と題したナタリー・ストーン氏による寄稿記事を公開した。

Larva Labsの功績と、アートによるブロックチェーン活用

ナタリー・ストーン氏は、様々な媒体や分野を横断するアートプロジェクトを企画している「Stone Work(ストーンワーク)」の創設者である。

同氏はアートにおけるブロックチェーンの活用について考察し、以下の3点の大きな変化が起きていると指摘する。

  • ネットワークが単なる保存先から「表現素材」へ変化
  • 「合意」が価値を作るという新しい価値観
  • 物理的な「美術館」という制約の超越

同氏は、1990年代のネットアート(インターネット上で表現されるアート)が中央集権的なサーバーに依存していたのに対し、現代のネットアートは分散型の合意形成を基盤としているという点が大きく異なると主張する。

そして、かつての先駆者がブラウザを素材としたように、現代のアーティストはイーサリアムの技術的制約を素材として、アートを形作っているという。

その代表例として、人気NFTシリーズ「CryptoPunks(クリプトパンクス)」などで知られる「Larva Labs(ラーバラボ)」のマット・ホール氏とジョン・ワトキンソン氏を紹介し、「各プロジェクトにおいて技術的な限界を押し広げることで新たな芸術形式を確立した」と言及した。

ナタリー氏は、ラーバラボによる主なプロジェクトと技術的革新について以下のように整理した。

  • CryptoPunks:2017年に公開された10,000のキャラクターからなるプロジェクト。246行のSolidity(ソリディティ)コードで構成され、デジタル所有権を再定義するERC-721規格の着想源となった。
  • Autoglyphs(オートグリフ):2019年に公開。アルゴリズム自体がトランザクション内で実行され、ミント時には当時のネットワーク容量の13.27%を消費した。
  • Quine(クワイン):2025年の最新作。自己複製するオンチェーン・アートであり、計算そのものが芸術の主題となっている。

ナタリー氏は、「ネットワークとは、何が価値あるものかについて人々が同意することだ」と述べる。CryptoPunksを例に、「技術的なプロトコル(コード)と社会的プロトコル(コミュニティの評価)が組み合わさることで、デジタルデータが『実体のある収集品』と同等の価値を持つようになった」と、そのプロセスを説明した。

さらに、ネットワーク・アートは「保存を担う機関である美術館よりも長生きする可能性を秘めている」と同氏は語る。

ニューヨーク近代美術館やロサンゼルス・カウンティ美術館などの主要機関がCryptoPunksの収集を開始していることに触れつつ、「ネットワーク(ブロックチェーン)が稼働し続ける限り、この芸術は特定の主体の管理を離れ、永続的に存在し続けることとなる」と、ネットアートが物理的な制約がある美術館などよりも永く保存される可能性があると解説した。

ナタリー氏による寄稿は、「アートとしてのNFT」や「NFTの活用方法」として過去数年間にわたって繰り返されてきた言説を、あらためて整理したものである。特に真新しい観点があるわけではないものの、NFTブームが沈静化した2026年現在に、あらためてイーサリアム公式アカウントがこの記事を公開したことには、なにか重要な意味があるのかもしれない。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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