ドバイの翼、デジタル通貨時代へテイクオフ
ドバイのエミレーツ航空は9日、「Crypto.com(クリプトドットコム)」との間で、将来的な決済システムの統合に向けた覚書(MoU)を締結したと発表した。統合は来年から実施される予定で、エミレーツ航空の顧客は航空券の支払いに仮想通貨を利用できるようになる。
今回の覚書の署名式には、エミレーツ航空グループのシェイク・アハメド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム会長兼CEOおよびマイケル・ドーサム最高財務・グループサービス責任者が見守る中、同社の副社長兼最高商務責任者であるアドナン・カジム氏と、クリプトドットコムUAE事業部門の代表であるモハメド・アル・ハキム氏によって執り行われた。
エミレーツ航空がこの提携に踏み切った背景には、戦略的な計算がある。同社のカジム氏は、「この戦略的な動きは、金融イノベーションの最前線に立つというドバイのビジョンと一致しており、同時に顧客がエミレーツ航空との取引においてより大きな柔軟性と選択肢を提供するものです」と述べた。これは単なる決済手段の追加ではなく、テクノロジーに精通した若年層の顧客セグメントを開拓するための戦略的な布石というわけだ。
一方、クリプトドットコムのエリック・アンジアニ社長兼COOは、「GCCにおけるクリプト事業の構築を共に進めていくことを楽しみにしている」と表明しており、この提携が仮想通貨の実用化促進に大きく貢献することが期待される。世界中を飛び回る旅行者が航空券という高額商品を仮想通貨で購入するようになれば、そのインパクトは計り知れない。
UAEは国策として仮想通貨産業の育成に注力しており、投資家保護と金融の安定性を確保しつつ、イノベーションを促進するための洗練された規制の枠組みを構築してきた。事実、ドバイでは不動産開発業者から大手通信会社に至るまで、すでに多くの企業が仮想通貨決済を導入済みである。エミレーツ航空の今回の決断は、こうした大きな潮流に乗った、いわば必然の結果ともいえる。
両社は今後、決済システムの統合検討と並行し、新たな決済ソリューションの認知度向上と利用促進を目的とした共同のプロモーション活動も模索していく予定だ。今回の提携が単なる決済手段の追加にとどまらず、航空業界における顧客体験のあり方や、仮想通貨の実用化にどのような変革をもたらすのか注目される。
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