AIフレームワーク「エリザOS」、ポリゴン上で正式利用開始

木本 隆義
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ブロックチェーンへの参入コストが劇的低下

イーサリアムレイヤー2ブロックチェーン「Polygon(ポリゴン)」上で動作するAIフレームワーク「ElizaOS(エリザOS)」が15日、正式に利用可能になったと発表した。

エリザOSは、多スマートエージェントやRAG(情報検索に基づく生成)などの高度な機能を盛り込みつつ、企業や個人開発者でも容易にAIエージェントを作成できる点が特徴。ポリゴンの特性を活用することで、開発者は低コストかつ迅速にサービスを試すことが可能となる。これは、AIエージェントへの「参入コストの低下」を意味し、イノベーションの促進につながることが期待される。

さらに、Web3領域における統合を視野に入れている点もエリザOSの特徴だ。NFTやDAOなど、これまで存在していた分散型の仕組みにAIを組み込むことで、新たなユースケースが広がる可能性がある。たとえば、ポートフォリオ管理では、ユーザーの行動を学習するエージェントが自動的に最適化を進めることで、相場監視に神経をとがらせる必要がなくなるだろう。このような応用は、投資家にとって大きな魅力となりうる。

もちろんAIエージェントの暴走やプライバシー保護など、懸念事項も存在する。エリザOSはデータの安全管理を重視しているとされるが、ブロックチェーン上にAIを載せたからといって、すべてが自動的にオープンになるわけではない。ユーザー体験をどこまで簡易化し、かつセキュリティとプライバシーを両立できるかが今後の課題となるだろう。

また、マルチエージェント機能は、複数のAIエージェントが同時に稼働し、協力してタスクを処理するしくみを提供する。たとえばカスタマーサポートでは「専門知識を持つAI」「請求関連に特化したAI」「雑談に対応するAI」などが連携し、人間は最終確認のみ行うシナリオが想定される。こうしたしくみがDAOやNFTと組み合わさることで、さらに多様な自動化の可能性が期待される。

エリザOSがポリゴン上で動作する意味は、ガス代の抑制と高速な取引処理にある。イーサリアムは依然としてブロックチェーン界のガリバーとして君臨するが、利用者が集中するとガス代が高騰するという課題がある。一方、ポリゴンでは低コストで実験を重ねやすい環境が整う。実験のトライ&エラーにかかる費用を下げることで、開発のスピードとイノベーションが高まる。

現在、エリザOSが開発者向けに特典や報酬を提供しているとの公式な発表はない。ただし、GitHub上では貢献者の活動を可視化する「コントリビューターボード」機能が開発されており、リポジトリ内で行った作業が可視化されるしくみが整備されている。こうした取り組みは、今後のコミュニティ活性化につながるだろう。

ポリゴン上で稼働を始めたことは、AIとブロックチェーンを組み合わせた新しい実用化の流れを加速させる一歩といえる。参入コストを下げることで新規開発を促進し、DeFiやNFT、DAOとの連携によって自動化の潜在力が広がる。こうした技術革新が進めば、AIエージェントが私たちの生活やビジネスの一部として、より深く根付く未来が訪れるだろう。

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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