現在のDEX設計が招くリスクにCZ氏が警鐘
暗号資産(仮想通貨)取引所「Binance(バイナンス)」の元CEOチャンポン・ジャオ(通称:CZ)氏は2日、「今がダークプール型の分散型取引所(DEX)を立ち上げるタイミングである」と公式Xで強調した。同氏はDEXにおける「透明性」がトレーダーに不利に働く可能性が高まっているとの見解を示しており、今後のDEXにはプライバシー保護機能の強化が不可欠であると訴えている。
CZ氏が問題視しているのは、現行のDEXにおける取引情報の公開だ。同氏は「注文が個人に紐づいていなくとも、注文完了までに他人にその内容を知られたくないというのがトレーダー心理だ」と述べ、既存の透明性に依存したDEX設計の限界を指摘している。
多くのDEXでは、誰もがリアルタイムで他のトレーダーの注文状況を把握できる仕様になっている。この仕組みが実質的なフロントランニングを引き起こす可能性はもちろん、コスト増加リスクにつながると指摘。さらに「他者が結託すれば自身のポジションを清算させることも可能だ」とも述べており、このようなリスクが、現実に発生した可能性もあるとCZ氏は示唆している。
こうしたリスクが、実際の市場で現れたと考えられるケースもある。5月30日、「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」のトレーダーであるJames Wynn(ジェームズ・ウィン)氏が、ビットコイン(BTC)のロングポジションで複数回の清算を受け、合計1,044.63 BTC(約1億1,000万ドル、約157.7億円)の損失を被ったことが話題となった。ハイパーリキッドはオーダーブックを採用するDEXのひとつであり、トレーダーの注文量やポジション、清算価格が他者からも把握可能な構造になっている。米国の関税政策が影響による市場変動が今回の清算の背景とみられているが、市場の透明性を逆手に取ったトレーダーによる価格操作が行われた可能性もあると考えられている。
こうしたDEXの透明性におけるリスクを背景に、すでに多くの大口トレーダーがダークプールを活用しているとCZ氏は指摘。その取引規模は従来型のオーダーブック(ライトプール)の10倍になることも多いと述べている。
CZ氏はダークプール型DEX化のアイデアとして、「オーダーブックを表示しない」「スマートコントラクトへの入金情報を非表示にする」などを投稿内で提案。これらの技術はゼロ知識証明(ZK)などの暗号化技術によって実現可能であるとし、開発の可能性についても示唆した。
最後にCZ氏は、ダークプール型DEXの構築に関心のある開発者や関係者に対して、自身への連絡を呼びかけた。ただし、投資や返答を保証するものではないとしており、慎重な姿勢も見せている。透明性が武器であったDEXは今、新たな転換点を迎えようとしている。CZ氏の語るダークプール型DEXが市場にどう受け入れられていくのか、今後の展開に注目が集まる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.39円)