チャールズ・シュワブ、仮想通貨現物取引を検討──CEO「1年以内に開始」

木本 隆義
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

フルサービス証券による仮想通貨機能の標準装備化が進行

米テキサス州に本社を置く証券会社「Charles Schwab(チャールズ・シュワブ)」のCEOリック・ワースター氏は17日、スプリングビジネスアップデートにおいて、「今後12ヵ月以内に暗号資産(仮想通貨)の現物取引を提供する方針」を表明した。その背景としてワースター氏は、同社の仮想通貨関連サイトへのトラフィックは前年比4倍であり、うち7割が新規の見込み顧客となる可能性がある、と説明した。  

その他にも考えられる背景は以下のとおり。

  • 約10兆ドルの運用資産を擁する総合証券会社がETF・先物経由の間接取引から現物取引へ舵を切ることで、若年層リテールの需要を大量に取り込みたい  
  • SEC(米証券取引委員会)は1月にSAB121(銀行の仮想通貨の預かりを制限していた会計ガイド)の撤回に動き、銀行の取引・保管両面での許可を示唆 
  • 2024年以降の政治情勢によっては仮想通貨に友好的な法環境が整備され、金融大手にとって「参入しないリスク」が増大  

シュワブがとると予想される主な施策は次の三点である。  

  • 信託業務とカストディを内製化し、証拠金ビジネスを拡大させる  
  • 既存の株式・オプション取引エンジンにBTC・ETHの板を統合し、ゼロコミッションでもPFOF(注文フロー売却)とスプレッドで収益化を図る
  • TMTGなど愛国(トランプ)系プラットフォームとの協業により、顧客獲得コストを抑えつつ「仮想通貨+愛国投資」のエコシステムを形成する

想定されるリスクは以下のとおりである。  

  • SECのライセンスフレームワークが遅れた場合、計画は後ろ倒しとなる  
  • 仮想通貨を自己保管する場合、自己資本規制に伴うバランスシート圧力が高まる  
  • 仮想通貨はSIPC(証券投資者保護公社)の適用外であるため、顧客保護スキームの構築が課題となる

今後は、伝統的金融機関と仮想通貨の対立構図は解消へと向かい、「伝統金融が仮想通貨を内包する段階」に移行すると考えられる。2024年のテーマが「現物ETFの承認」だったとすれば、2025〜2026年のテーマは「フルサービス証券会社による仮想通貨機能の標準装備」となりそうだ。

関連:トランプ系メディア企業「TMTG」、Crypto.comと共同で新ETFを発表

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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