中長期の企業価値向上を見据えた財務戦略
株式会社TORICO(東証グロース:7138)は8日、暗号資産(仮想通貨)への投資事業を開始することを発表した。ビットコインを中心とする資産の保有により価値の保存と多角化を図り、2026年1月から2027年12月にかけて総額約5億円の初期投資を予定している。事業開始には臨時株主総会での定款変更が前提となる。
同社によると、仮想通貨市場の成長と、ビットコインのインフレ耐性や価値保存手段としての評価が高まる中、企業価値向上を目指す中長期的な戦略の一環として事業参入を決定した。既存のECサービスやイベントサービスにおいても、ブロックチェーン技術の活用による新たなビジネス展開を視野に入れる。
具体的な事業内容としては、ビットコインへの直接投資および保有を通じた資産の分散と、新規事業創出に向けた知見の蓄積が柱となる。加えて、同社が展開するサービス領域においてブロックチェーン技術を導入し、既存事業の高度化も検討するという。
運用体制については、暗号資産に関する十分な知見を持つ外部専門家の協力のもと、リスク管理を徹底する。購入価格から50%以上の下落が発生した場合には保有資産の一部または全部を売却するロスカットルールを設定するほか、信頼性の高いカストディサービスやセキュリティ体制を導入し、透明性と安全性を確保する。アドバイザリー費用は自己資金から充当する予定。
初期投資額の5億円のうち、3億円は第9回新株予約権行使による調達予定資金、2億円は手元資金から充当する。第9回新株予約権行使資金の使途については、2025年7月8日開示「資金使途の変更に関するお知らせ」にて記載のとおり、既に開示済みの内容から変更された。
会計上、暗号資産は無形資産として扱われ、期末時点で著しい価値の下落が認められた場合に限り減損処理が行われる。四半期ごとの時価評価および評価損益の計上は行わない方針だが、重要な変動があった際には適宜開示を行う。
同社は当期業績への直接的な影響は軽微と見込んでいるが、将来的には財務戦略の柔軟性向上および企業価値の向上に資するものと判断している。
事業開始は、2025年12月末までに開催予定の臨時株主総会で定款変更が承認された後、速やかに実施される予定。
仮想通貨市場は依然としてボラティリティが高く、慎重な運用が求められる。TORICOのように、外部専門家と連携しながら段階的に事業を展開する姿勢は、リスクと機会の両面を適切に捉えたアプローチといえる。企業がデジタルアセットを活用する先進事例として、今後の動向に注目が集まる。
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