ストライプとパラダイム、決済特化型ブロックチェーン「Tempo」を正式発表

木本 隆義
13 Min Read
画像はTempo公式サイトより引用

金融テクノロジー企業「Stripe(ストライプ)」と、暗号資産(仮想通貨)に特化したベンチャーキャピタルの「Paradigm(パラダイム)」は4日、新型の決済特化型ブロックチェーン「Tempo(テンポ)」の立ち上げを正式に発表した。

実世界の支払いに対応するブロックチェーンとなれるか

本件は、ステーブルコインの普及を背景に、決済インフラの革新をねらった動きである。実際、テンポはEVM互換で、Reth(レス)を基盤に構築されているため、開発者が扱いやすい。しかも、毎秒10万件以上の取引を処理し、サブセカンドのファイナリティを実現する。つまり、高速でスケーラブルな設計を特徴とする。また、ガス代や転送を任意のステーブルコインで可能にするAMM(自動マーケットメイカー)を組み込み、プライバシーのオプションも備える。これにより、国際送金やマイクロペイメント、24時間決済が現実的になる。

今回の発表に至る経緯はかなり興味深い。まず、ストライプは今年2月、「Bridge(ブリッジ)」を11億ドルで買収した。これはステーブルコインの発行プラットフォームで、仮想通貨分野への本格進出を示す。続いて6月には仮想通貨ウォレット開発企業「Privy(プリビー)」を買収し、ウォレット技術を強化した。これらの買収は、テンポの基盤を整える布石だったといえる。

そして、8月3日、「Blockchain Association(ブロックチェーン・アソシエーション)」の求人広告でテンポの存在が漏洩した。内容は高性能決済ブロックチェーンの開発を匂わせるもので、「Fortune(フォーチュン)」誌の問い合わせで広告が削除された。この件は、筆者には話題づくりのためのヤラセのようにも見える。その後、8月11日の報道でプロジェクトの概要が明らかになり、パラダイムの共同創業者マット・フアンがストライプの取締役を務める信頼関係が指摘された。

こうして、テンポはステルスモードで進められていたプロジェクトとして注目を集めた。チームは当初5人規模とされていたが、公式発表では「Anthropic(アンスロピック)」「Coupang(クーパン)」「Deutsche Bank(ドイツ銀行)」「DoorDash(ドアダッシュ)」「Lead Bank(リードバンク)」「Mercury(マーキュリー)」「Nubank(ヌーバンク)」「OpenAI(オープンAI)」「Revolut(レボリュート)」「Shopify(ショッピファイ)」「Standard Chartered(スタンダードチャータード)」「Visa(ビザ)」をはじめ、名だたる企業がパートナー企業として名を連ねた。これらのパートナー企業は初期設計に協力し、テンポのユースケースを広げる役割を果たす。

テンポの究極の目標は、分散化の推進にある。将来的にパーミッションレスのバリデーターを導入し、誰でも参加可能にする計画だ。それゆえ、ステーブルコインの取引手数料を安定的に低水準に保ち、支払い専用レーンやメモ機能、アクセスリストを搭載する。これらは、従来のブロックチェーンが抱えるスケーラビリティの問題を解決する鍵となる。

一方で、パラダイムの関与は仮想通貨の専門性を注入する。ストライプの決済経験と組み合わせることで、テンポは中立的でグローバルなインフラを目指す。たとえば、給与支払いやトークン化預金、AIエージェントによる決済を想定しているという。

テンポの立ち上げはストライプの仮想通貨戦略の集大成ともいえる。買収から漏洩、公式発表まで、慎重なステップを踏んだ経緯がわかる。ただし、今後テンポが仮想通貨決済のスタンダードになるかどうかは、市場の反応次第だろう。

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。著書『マウンティングの経済学』ほか。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。仕事のご依頼はツイッターにて。 ツイッター:@t_kimoto
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