決済と資産トークン化に向けた段階的な拡張計画
イーサリアム互換のブロックチェーンL2「Polygon(ポリゴン)」は12日、処理性能を10万TPSへと押し上げる「Gigagas Roadmap(ギガガス・ロードマップ)」を公表し、オンチェーン決済を日常生活に対応させる構想を示した。
ポリゴンは、決済や資産のトークン化を支えるパブリックチェーンとして、USDCのアクティブアドレス数で首位を占めるなど、実需を背景に着実な拡張を続けている。そのエコシステムを担保するガス兼ステーキングトークン「POL」を軸に、開発者・企業・利用者が相互に価値を循環させる構造を築いてきた。
今回発表されたロードマップは三段階の構成からなる。
第一段階は、2025年7月までに到来する「Bhilai(ビライ)アップグレード」である。取引確定時間を約5秒へ短縮しつつ1,000 TPSを実現する。ベースガスを平準化し、安定した手数料を保証することで、高頻度トラフィックへの耐性を強化し、少額決済や予測市場「Polymarket(ポリマーケット)」といった用途にも対応できる設計とされている。
第二段階は、2025年10月末をめどに、バリデータ選出型ブロックプロデューサー(VEBloP)を導入し、5,000 TPSを常時発揮する。ブロック再編を排除して“単一ブロック確定”を実装することで、金融機関が忌避する再編成リスクを大幅に低減するとされる。同時に、マルチチェーン流動性層「Agglayer(アグレイヤー)」との直結により、チェーン間の資産移転を一つの残高で横断的に完結させる設計が加わる。
第三段階は、2026年以降の「ギガガス」だ。ここでは10万TPSを射程に、国境を越える小口決済やリアルワールドアセット(RWA)の巨額トークン化を一気通貫で処理する“決済バックボーン”へ変貌することが掲げられる。バリデータ拡充やアグレイヤーの高度化も視野に入れており、見かけ上のチェーン境界すら意識させない統合的ユーザー体験を目指す。
この野心を支える現実的裏付けとして、「Stripe(ストライプ)」、「Reliance Jio(リライアンス・ジオ)」、「BlackRock(ブラックロック)」をはじめ、伝統金融・通信大手がすでに試験運用に名を連ねており、ポリゴン上のRWA残高は2025年Q1に2.7億ドル相当へ達した。供給拡大と高速化の“鶏と卵”を正面突破するためには、まさしくギガガス級のスループットが不可欠というわけだ。
ブロックチェーン決済が「はやい・やすい・みえない」のステージに達したとき、ユーザーはもはや技術基盤を意識しない。ポリゴンのロードマップは、その地平を現実の制度・ビジネス・市民生活へ橋渡しするための工程表に他ならない。グローバル決済と資産管理の隆盛は、10万TPSという数字が単なる誇示で終わるか、それとも次代のインフラ標準となるかに懸かっているといえよう。