LIBRA運営者が激白「急落は意図的に投資家を欺いたものではない」

木本 隆義
18 Min Read

騰落に関与したアルゼンチン大統領も告訴の危機

ソラナ上に構築されたミームコイン「LIBRA(リブラ)」運営者ヘイデン・マーク・デイビス氏は17日、YouTubeインタビューにおいて「リブラの急落は意図的に投資家を欺いたものではない」と語った。

まず「リブラ」という名称だが、天秤座を連想する人も多いだろう。だが実際はアルゼンチンのミレイ大統領がSNS上で「El mundo quiere invertir en la Argentina. $LIBRA.」(世界はアルゼンチンに投資したがっている。$LIBRA)と発信したとたん、価格が急騰して、その後大暴落した暗号資産(仮想通貨)のことである。世界中の投資家が「一国の大統領の『推し』なのだから大丈夫だろう、たぶん」と信じ、ホイホイ買ったらあっさり崩落したという話である。

現状としては、「アルゼンチン国民を救うためだった」と大統領サイドは主張しているが、実際には内部者が利益を得て逃げたのではないかという疑惑が浮上している。告訴の話も出ており、ラグプル(プロジェクト側が資金を持ち逃げする詐欺)の可能性を示唆する声も多い。プロジェクト関連の開発チームに1億ドル相当が残っているともいわれ、「これをどう扱うべきか」という議論が混乱を深めている状況である。

大統領本人は「俺は1セントも得ていない。あくまで国民のためだ」と述べているが、市場の目は厳しい。大統領が紹介したコインが急騰直後に暴落したのだから「責任をどう取るのか」という声が上がっている。さらに「インサイダー的に事情を知っていた周辺が先に売り抜けたのではないか」という疑念もあるが、本人が直接行ったかどうかは不明である。

リブラの中心人物ヘイデン・マーク・デイビスの発言を中心に問題を再考しよう。

デイビスはYouTubeインタビューにおいて、リブラの急落を「意図的に投資家を欺いたものではない」とし、ラグプルの類ではないと強調している。彼いわく、本来の構想はアルゼンチン国内の中小企業を支援するための資金調達を実現し、かつミーム的注目度を活用することでトークン価値を伸ばそうとするものだったという。結果的に価格が暴落したのは、スナイピングなどの想定外要因や政治的圧力が重なった「悲惨な失敗だった」と述べている。

市場ではリブラの大暴落後、プロジェクト側が1億ドル相当の資金を保持しているとの情報が流れ、一部では「開発者がこれを持ち逃げした」という見方もある。デイビス自身はこの資金について「投資家保護や流動性再注入のための“公的な資金”として手元に残している」と説明する。もっとも、その使い道についてはチーム内でも意見がまとまっていないようで、「損失補填に回すか、再度価格を押し上げるような形で再投資するか」など、具体的プランは定まっていないと語っている。

デイビスは複数回にわたりミレイ大統領側と面会し、リブラを「国家的なブロックチェーン実験」として扱う意図があったと述べている。一方で、大統領本人が仮想通貨全般に深い知見を持っていたかは疑問で、デイビスが「専門家」としてアドバイスし、その結果としてSNS投稿が行われた可能性が高いという。大統領自身が個人的に利益を得たかどうかについては否定的な見解を示しながらも、結果として国民の反発を招いた現状を「政治家としてのリスク管理が甘かったのでは」と評している。

スナイピングとは、新規トークンが公開される瞬間に高速ボットなどで大量に買い込む行為を指す。デイビスによれば、「個人投資家に安定した取引機会を提供しようとすればするほど、スナイパーに狙われやすい」というジレンマがあったという。実際、リブラの初期には大口ウォレットが数千万ドル相当のトークンを保有し、タイミングを見計らって大量売却したことが価格崩落の一因となった。

一部のブロックチェーン解析では、リブラ開発チームや関連アカウントがトークン初期に大量買いを行っていた可能性が示唆されている。デイビスはこれについて「大口の外部スナイパーを牽制するための施策で、意図は価格の安定化だった」と反論する。しかし、この行為自体が結果的に市場の不信感を高め、「インサイダー取引ではないか」という批判を招いたことは否めない状況である。

デイビスが繰り返し強調するのは「損失を被った投資家を放置するつもりはない」という点である。ただし、どの時点の価格を基準に返済を試みるか、あるいは部分的に救済する方法をとるかなど、具体案を示せていない。さらに1億ドルの使途をめぐってチーム内外で意見が交錯し、法的リスクも含めて慎重を期す必要があるという。

現時点ではアルゼンチン政府から公式に「どうせよ」という指示が出ていないとデイビスは述べる。むしろ政界は告訴や弾劾の可能性を議論する段階にあり、プロジェクト側がどう動いても政治的批判を浴びるリスクが残るという見方である。デイビス自身も「国家プロジェクトとしての体裁が崩れた今、資金の扱いひとつで公人から標的にされかねない」と不安をあらわにしている。

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SOURCES:voidzilla
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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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