米大手ベンチャーキャピタルa16z(Andreessen Horowitz / アンドリーセン・ホロウィッツ)の暗号資産(仮想通貨)部門a16zクリプトは11日、2026年に向けた暗号資産分野の主要な17のトレンドを予測するレポートを公開した。このレポートでは、暗号技術が投機中心の段階を超え、世界の金融とインターネット基盤そのものへと組み込まれていく過程が描かれている。
ステーブルコイン取引量はVisa超え、RWAはクリプトネイティブ化へ
まず焦点となったのが、ステーブルコインがインターネット上の決済基盤として広く定着するという見通しだ。すでにステーブルコインの年間取引量はVisa(ビザ)やPayPal(ペイパル)を上回るほど成長しており、今後は銀行口座への接続(オンランプ/オフランプ)が劇的に改善され、国境を越えた即時決済の主流になるとしている。
ステーブルコインが決済の中心となることで、古い技術に依存する銀行は大規模な改修を行わずとも新しいサービスを提供できるようになるという。これにより、インターネット全体が銀行機能を担う時代が加速すると予測されている。
また、現実資産(RWA)のトークン化も新たな段階に入ることも指摘されている。単に既存の資産をデジタル化するのではなく、パーペチュアル先物のようなクリプトネイティブな表現が増えると予測。オンチェーン上で直接債務資産を組成する動きが強まり、コスト削減とアクセス向上につながる可能性がある点も示された。
AIエージェントの台頭が新たな課題を提起、「KYA」とナノペイメントが必要に
レポートでは、AIエージェントの台頭がクリプトにもたらす新たな課題と機会も強調されている。AIが自律的に取引を行うようになるにつれて、その身元を証明する「KYA(Know Your Agent)」の仕組みが急務になると指摘。人間と同様に、エージェントにも責任や制約を紐づける暗号署名された証明が必要になるとしている。
さらに、AIが広告収益を回避することでオープンウェブの経済が崩壊するのを防ぐため、ナノペイメント(超微細決済)などを活用したリアルタイムでコンテンツに報酬を支払う新しいモデルが求められるという。
プライバシー機能がチェーン競争の鍵に、安全性の考え方は「仕様書主導型」へ進化
レポート内では、金融システムがオンチェーンに移行するうえで不可欠なプライバシーと、プロトコルの安全性が技術的に進化することも示されている。
技術の進化においては、プライバシーとセキュリティが最重要視される。トランザクションの秘密を守るプライバシー機能は、競争が激化するチェーン間での強力なネットワーク効果を生み出す鍵となり、市場を勝ち抜くための決定的な要素となるとしている。
一方、セキュリティ面では、これまでの「コードが法律」から設計レベルの安全特性をコードに組み込む「仕様書(スペック)が法律」へとアプローチが進化すると予測されている。コード実行時にその特性に違反するトランザクションを自動的に無効化することで、DeFi(分散型金融)のハッキングに対する防御力が大きく向上するとしている。
a16zクリプトの予測は、暗号資産が来年にも真に世界経済のインフラへと組み込まれ、日常生活や商取引のあり方を根本から変革する、最も重要な一年になることを示唆している。規制の進展と技術革新の相乗効果が今後の暗号資産業界にどのような影響をもたらすのか、これからの動向に注目したい。
関連:ビットワイズCIO、2026年の暗号資産投資は「インデックスファンドが鍵」
関連:CZ、ビットコイン4年サイクル終焉を示唆──2026年スーパーサイクル突入の可能性も




