AIクラウド企業「CoreWeave」、インフラ企業「Core Scientific」を約90億ドルで買収へ

伊藤 将史
11 Min Read

マイニングから始まった両社、電力確保でAI競争を加速

AIクラウドインフラ企業「CoreWeave(コアウィーブ)」は7日、データセンターインフラプロバイダーの「Core Scientific(コア・サイエンティフィック)」を、全株式交換によって買収する最終契約を締結したと発表した。買収における株式価値は約90億ドル(約1.3兆円)に上る。

両社は、いずれも2017年に設立され、暗号資産(仮想通貨)マイニング事業からスタートした企業である。

コアウィーブは、仮想通貨のマイニング事業で培った大規模GPU運用のノウハウを基盤に、現在はAI向けクラウドサービスを手掛け、生成AIのブームを背景に急成長を遂げた。一方、コア・サイエンティフィックも仮想通貨マイニングを中心事業のひとつとしてきたが、近年は主にAIサービス向けのデータセンター事業も手掛けている企業である。

買収は株式交換によって行われ、コア・サイエンティフィックの株主は、保有する自社株1株につき、対価としてコアウィーブの株式0.1235株を受け取る。この取引は、規制当局やコア・サイエンティフィック株主の承認を得た後、2025年第4四半期に完了する見込みだ。買収完了後、旧コア・サイエンティフィック株主が保有する統合後会社の株式比率は10%未満となるとされている。

今回の買収がもたらす主な戦略的メリットについて、コアウィーブは以下の通り説明している。

  • 運用効率の向上とコスト削減:最大のメリットは、これまでリース契約で支払っていたデータセンター費用が不要になる点だ。これにより、今後12年間で支払う予定だった100億ドル(約1.46兆円)以上のリース関連費用が削減される。
  • 電力インフラの確保:コア・サイエンティフィックが全米に保有する約1.3ギガワット(GW)の稼働中電力と、さらに1GW以上の拡張可能な潜在的電力を一挙に獲得する。これにより、AI開発競争で重要性が増す電力供給を安定的に確保し、事業拡大の基盤を固める。
  • 財務的柔軟性の向上:データセンターという不動産資産を自社で保有することで、より魅力的な資本コストで多様な資金調達戦略を追求することが可能になる。

コアウィーブのマイケル・イントレーターCEOは今回の買収について、「高性能データセンターインフラの所有権を垂直統合することで、事業効率を大幅に高め、将来の拡張リスクを低減できる」と述べている。

今回の買収は、AI開発競争が半導体の性能だけでなく、それを支える電力や不動産といった物理的なインフラの確保へとシフトしていることを象徴する動きと言える。大手クラウド事業者に対抗し、AIインフラ市場での覇権を目指すコアウィーブの垂直統合戦略が、業界の勢力図にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=146.39円)

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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