コインベース・インスティテューショナルは10月28日、月次マーケットアウトルック「Market Recalibration(市場の再調整)」を公開し、10月10日に発生した大規模清算イベント後の暗号資産(仮想通貨)市場について、「壊れたのではなくリセットされた」との見解を示した。
レバレッジ一掃で市場は健全化
同レポートによると、この清算イベントは暗号資産史上最大級の規模となり、多くのアルトコインが40〜70%下落した。しかし、これは市場の根本的な破綻ではなく、過剰なレバレッジを解消する技術的な調整であったという。

デリバティブの建玉をステーブルコインを除く時価総額で割った「システマティック・レバレッジ比率」は、清算後に年初水準まで低下しており、市場が健全な状態に戻ったことを示している。

注目すべきは、今回の清算で打撃を受けたのは主に個人投資家が保有するアルトコインであり、機関投資家は低レバレッジ戦略や大型銘柄への集中投資により、大きな影響を免れた点である。
コインベースは、今後の市場回復は機関投資家の資金流入が主導すると予測。急激な価格上昇ではなく、数ヶ月かけて緩やかに上昇するシナリオを想定している。今後2〜3ヶ月間はビットコインのドミナンス(市場シェア)が徐々に上昇し、イーサリアム対ビットコイン(ETH/BTC)やアルトコイン対ビットコイン比率に下押し圧力がかかる可能性があるとしている。
オプション市場から算出した今後3〜6ヶ月のビットコイン価格の予想レンジは9万ドルから16万ドルで、上昇バイアスが強いという。

スマートマネーはイーサリアムへ集中
資金の流れにも大きな変化が見られる。ナンセンが追跡する「スマートマネー」と呼ばれる投資ファンドやベンチャーキャピタル、優秀なトレーダーの資金は、イーサリアムやアービトラムといったEVM(イーサリアム仮想マシン)スタックへ集中し始めている。一方、ソラナやバイナンス・スマート・チェーン(BSC)からは資金が流出する傾向が顕著だ。

アービトラムは10月に「DRIP Epoch 4」などのインセンティブプログラムを再始動させ、貸出や流動性提供に報酬を提供。これが資金流入の呼び水となった。ベースチェーンでも10月25〜26日にかけて「x402」エコシステムが急成長し、ファーキャスターによるトークンローンチパッド「Clanker」の買収も相まって、ユーザー流入が加速している。
セクター別では、清算後の市場混乱で二桁のAPY(年率利回り)が再び出現したことから、「ユーティリティ+イールド」型のプロトコルに資金が集まっている。

特に注目されるのが、ブラックロックのトークン化ファンド「BUIDL」の動向だ。10月にポリゴン、アバランチ、アプトスへそれぞれ約5億ドルを展開し、RWA(現実世界資産)セクターへの機関投資家の強い関心を示した。トークン化された国債は4〜6%の安定利回りを提供し、投機的な側面が薄れた10月の市場環境において、伝統的金融機関の参入を促す役割を果たしている。

ステーブルコインの供給量を見ると、トロンを除くほとんどのチェーンで過去30日間の成長率が鈍化しており、新規資金の流入ではなく既存資金の再配分が起きていることが分かる。持続的な価格上昇にはステーブルコイン供給の拡大が必要だとコインベースは指摘している。
マクロ環境については、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げや暗号資産に友好的な規制整備(GENIUS法案やCLARITY法案など)が強気材料となる一方、貿易摩擦や財政赤字の拡大といったリスク要因も存在すると指摘。それでも、現在の市場センチメントが「恐怖」領域にあることは、逆説的に中長期的な強気相場の前兆であり、2026年第1四半期まで上昇が続く可能性があるとの見方を示した。




